外国人労働者と労働安全衛生 雇用者の姿勢が問われている
2019/7/22
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「出入国管理及び難民認定法および法務省設置法の一部を改正する法律」の2019年4月1日施行に伴い、「外国人材受け入れのための新たな在留資格制度」がスタートしてはや3カ月が経過した。特定技能外国人の受け入れによって、労働災害発生の危険性はこれまで以上に高まっている。外国人労働者に対する労働安全衛生教育の実施と、日本人労働者を含めた安全衛生水準の一層の向上は急務だ。
つい先日、とある解体工事現場の前を通りかかったときのことだ。筆者の目線の先にいたのは、ジーパンにTシャツ姿のまま、ヘルメットもかぶらずにパワーショベルを操作する外国人と、同様の姿で安全靴さえ履かずにアームの旋回軌道内にいたもう一人の外国人だった。現場との敷地境界には、外囲いも養生もしていないその現場を心配そうにながめる住民の姿があった。
厚生労働省にしても、手をこまぬいてこうした状況を見ている訳ではない。「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(2007年8月3日同省告示第276号)で示した▽安全衛生教育の実施▽労働災害防止のための日本語教育等の実施▽労働災害防止に関する標識・掲示―などを講じるとしており、特定技能の建設分野11職種を対象とした安全教育用リーフレットとビデオ教材の製作などにも取り組んでいるが、ただ、いかんせん対策が後追いになっている印象がぬぐえない。
ただ、「外国人労働者の労働安全衛生」というテーマが、口頭や机上の作文でどうにかできるほど簡単なことではないこともまた事実だ。
大半の外国人労働者は特定技能外国人労働者に限らず、日本語やわが国の労働慣行、労働安全衛生管理に対する知識を持ち合わせていない。
一方で、これまでも外国人労働者(外国人技能実習制度、外国人建設就労者受入事業で受け入れられた外国人労働者)を雇用してきた事業者にしても、かならずしも体系的に整理された安全衛生教育を彼らに提供してきたとは言い難い。ましてや、外国人労働者を受け入れようとしている建設事業者、特に中小事業者には彼らを教育する知識も経験もないというのが実際のところだろう。
こうした状況をみたとき、建設業労働災害防止協会(建災防、錢高一善会長)が外国人労働者に対する安全衛生教育・研修のあり方に関する検討委員会(委員長、蟹澤宏剛・芝浦工業大学建築学部建築学科教授)を設置し、ここでの議論を踏まえて特定技能外国人に対する特別教育、技能講習、職長教育など法定教育の在り方について厚労省に提言し、さらに外国人労働者にも理解できるように建災防統一安全標識を見直し、ユニバーサルデザインとしたことは大きな前進であり、一つの朗報だ。
外国人労働者を「労働力」とのみ、みるべきではない。彼らにも故国で無事を祈る家族がいる。日本人の労働者もそうであるように、労働者とともにいる人たちを悲しませない労働安全衛生でありたい。そうした雇用者としての姿勢が、結果的に有為な労働者の獲得、自社の経営の持続につながるはずだ。
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