建設業の複業化―地域に不可欠な取り組みへ
2019/7/30
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2004年6月、国土交通省は『建設産業構造改善推進プログラム2004』をまとめ、地域の中小・中堅建設業についてこう書いた。「地域の経済、社会の発展に欠かすことのできない役割を担っているが、(略)経営環境は厳しさを増しており、再編・淘汰(とうた)が避けられない」。そして、経営改革の方向として、企業連携や、農業・福祉・環境ビジネスなど新分野進出を促進することが必要だとした。
2年後の06年7月、農業や介護などの異業種への進出を模索する全国の建設業が事業を情報共有する『全国ワークショップ 持続可能な社会基盤と地方活性化』を有志が東京都内で開いた。催しは『建設トップランナーフォーラム』(主催・建設トップランナー倶楽部)に発展、防災やインフラメンテナンスなどにもテーマを拡大し、毎年続けることになった。
第14回の今年のフォーラムが6月28日、建設業や行政など約300人の参加者を集め東京都内で開かれた。テーマは「原点回帰―複業で地域を支える」。建設業の新分野進出に改めて焦点を当てた。
公共事業の減少をきっかけに、雇用と経営を守ろうと始まった建設業の新分野への挑戦では、失敗したケースも多い。初期のフォーラムで発表された取り組みで、その時点で採算を含め成功している事例は少なかった。
今回のフォーラムを取材して実感したのは、新分野進出による複業化の、ビジネスモデルとしての進化と成熟だ。さらに、人口減少と地域間格差によって進む地方の衰退への対策としての可能性を示唆する事例もあった。
事例ごとに成功のポイントはあるが、共通するのは本業の建設業で培った技術やノウハウ、人材、機材の活用と、複数の事業を連携による相乗効果の発現だ。
森建設(鹿児島県鹿谷市)の受注は07年、公共工事が70%だった。畜産業で蓄積したノウハウを生かし畜産農業施設の受注にシフトし、現在は民間受注が70%を超える。
舗装と土木工事だけだったセントラル建設(岐阜県恵那市)が、リフォームを施工するようになったのは、介護用品レンタルに進出したのがきっかけだった。要介護者のニーズにきめ細かく対応するリフォームが、それぞれの事業拡大の相乗効果をもたらした。
地方の衰退への対策として、深松組(仙台市)の取り組みは秀逸だ。同社の創業の地である富山県朝日町笹川地区はライフラインの簡易水道の老朽化の問題に直面していた。同社は水力発電の収益による簡易水道の更新を提案。信託方式による資金調達を含め事業の枠組みを構築した。
紹介したい発表はまだあるが、紙幅の関係で今回は省略せざるを得ない。
当面、防災・減災対策によって一定の公共事業量が維持される見込みだ。しかし日本の財政状況からして、将来的に事業量は再び絞られる。それでも地域建設業は地域で存在し続ければならない。
農業などを複業にした小坂田建設(岡山市)は、18年7月の西日本豪雨の際、「平時に維持してきた車両や重機が活躍し」、復旧・復興に貢献できたという。建設業の複業化などによる存続は、地域においては建設業だけの問題ではない。
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