これからの公共事業 中長期の見通しと根拠がほしい
2019/8/26
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国土交通省の推計によると、2019年度の建設投資(名目値)は62兆9400億円となり、前年度額を3・4%上回る見通しとなった。「防災・減災、国土強靱(きょうじん)化のための3か年緊急対策」で、政府建設投資が伸びたことが増額の要因だ。
緊急対策では、西日本豪雨をはじめとする昨夏の自然災害による被害を教訓として、災害時にも重要インフラが機能を維持できるようにソフト・ハード対策を講じている。このための事業費は18〜20年度の3カ年で事業費を7兆円程度と見積もっている。
当初予算に計上される公共事業費は、14年度以降、前年度を数十億円上回る微増を続けてきたが、政府は今年10月の消費増税に対する「臨時・特別の措置」によって財源を確保。19年度当初予算に緊急対策に伴う公共事業費を大幅に上乗せし、公共事業費を前年度比15・6%増の6兆9099億円へと増額した。
緊急対策は、19年度末までに総事業費約7兆円のうち5兆円を執行する見込みだ。20年度当初予算案には、臨時・特別の措置で最終年度の緊急対策の事業費が盛り込まれる。18年度当初予算まで6兆円弱で推移してきた公共事業費も、19年度当初予算と同様に、緊急対策を臨時・特別の措置で上乗せすることが決まっている。
20年度までの公共事業費に一定の見通しは立っている。だが、21年度以降については何も見えてはおらず、公共事業費の減少を不安視する声が上がっている。24年4月から建設業に働き方改革関連法が適用され、時間外労働の上限規制が適用されることになっている。企業の関連経費が上昇するのは必至だ。建設投資全体で考えれば、今年10月に控える消費増税や20年東京五輪の後、民間建設投資の冷え込みも懸念されるところだ。
21年度に公共事業費が落ち込めば、人材への投資を維持できなくなる恐れがある。ただでさえ、人材へ等しできる原資が潤沢とは言えない中小建設業は、こうした不安にかられ、人材への投資を手控えることも考えられる。
激甚化した自然災害の切迫性は高まっているが、3年で防災・減災と国土強靱化を終えるのは難しい。21年度以降の継続的な投資は不可欠だ。
一方で、社会資本の老朽化問題も深刻さを増している。修繕の必要性の高い橋梁でさえ、修繕実施率は20%にとどまっている。市町村にとどまらず、都道府県にとっても修繕に当てる財政負担は重い。国が財源を確保し、地方自治体を支援する必要がある。
20年東京五輪後、日本経済の状況が悪化するのか、景気を維持できるのかは、現時点では不透明な状況にある。ただ、現下の世界経済にはさまざまなリスクが顕在化している。企業経営者の多くが、先行きに不安を覚えていることは間違いない。
20年間にわたって抑制されてきた公共投資には、防災・減災や国土強靱化、老朽化対策など、国民の安全・安心の確保に欠かせない事業が数多く残されている。政府は中長期的な計画をつくり、今後の公共事業が安定的に継続していけるように、その見通しと根拠を示すべきだ。
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