台風15号からの学び 復旧に「マネジメント」を
2019/10/7
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9月に関東地方を襲った台風15号は、多数の建物に損傷を与え、長期間にわたる停電や断水を引き起こした。特に被害の大きかった千葉県南部では、被害の詳細を把握するまでに日数のかかった自治体もあり、災害時の迅速な応急対応の困難さと重要性をあらためて印象づけた。災害対応の最前線を担う自治体のマンパワーには限りがある。技術者集団としての、国土交通省の緊急災害対策派遣隊(TEC−FORCE)の役割が重みを増している。
台風15号では多数の電力柱が倒壊し、関東地方で最大約93万戸が停電した。その後も千葉県では、道路交通が寸断され、停電の復旧を当初の見込みより大幅に遅らせる原因となった。東京電力が電気設備会社などに応援を求め、早期復旧に努めたものの、現場までたどりつくだけでも時間を要した。倒木の処理に当たることができる人員の確保にも苦労したという。
国交省関東地方整備局はこの台風15号でもTEC−FORCEを派遣した。今回の活動の特徴は、直轄国道や河川の復旧よりも、自治体・民間など関係機関間の連携支援が中心となったことだ。比較的早期に復旧できた国道などと異なり、千葉県内の市町村道は9月18日時点で合計226カ所が倒木で通行止めとなるなど、国交省が直接に管理するインフラ以外の被害が大きかったためだ。
関東地整は地元自治体に情報連絡員(リエゾン)を先行させ、必要とされる支援内容を把握、検討するため被災地の情報収集に当たった。これを基に、自治体の要望を聞き取り、停電の復旧作業を指揮する東京電力とも調整して復旧すべき道路の優先順位を検討。現場での作業を担う建設業団体に伝え、効率的な道路復旧につなげた。
また、被災した住宅の支援も行った。被害状況調査などの技術支援を行った他、住宅の屋根にブルーシートを張る職人の派遣を関東管内の都県の建設業協会に依頼。市町村には困難な、広域的な支援体制の構築に取り組んだ。
国交省がTEC−FORCEを創設してから11年。ことし7月までに、96災害に延べ約8万人・日の隊員を派遣してきた。派遣隊員数・派遣回数の増加とともに、求められる役割も拡大してきている。こうした社会的要請に応えるため、国交省は19年度から、全国の各地整に統括防災官を置くようになった。また、災害対策マネジメント室も設置し、隊員の派遣調整や現地活動の後方支援、指揮命令の体制を強化した。
台風15号での活動が、関東地整においては新体制に転換してから最初の本格的な防災対応となった。体制拡充の目的に掲げた「防災関係機関との高度な調整」の成果はどうだったのか。関東地整による検証を待ちたい。
多種多様な自然災害が頻発、激甚化する様相を見せている。かけがえのない住民の生命と財産を守るには、国の機関や自治体はもちろん、インフラ整備に関わる企業などさまざまな事業者との連携が欠かせない。
そのためには、TEC−FORCEが蓄積してきた経験知を活用し、統括防災官を配置した効果を最大化できるような、防災・減災マネジメントの実施体制を構築することが必要だ。
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