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ふるさと納税と地方財政 中長期的な視点から考えたい

2020/1/27 

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ふるさと納税制度によって、都市部の自治体の税収減が拡大している。近年、加速度的に制度の利用が進む一方、数十億円規模で税収が減収する自治体が続出しており、今後必要になるインフラ投資への影響も懸念されている。制度による寄付行為が結果的に納税者自身がいま暮らしている都市やまちの機能を損ねることにもなりかねない。
 この制度は生まれ育った故郷や被災地などに住民税の一部を寄付することで、都市部の税金を税収不足に陥っている地方に移すことなどを目的に創設。総務省の「ふるさと納税に関する現況調査」によると、2018年度に最も税の流出額が大きかった自治体は横浜市で、名古屋市、大阪市、川崎市、東京都世田谷区、神戸市などがこれに続く。19年度は地方交付税交付金による補填(ほてん)がない川崎市で56億円、世田谷区で53億円、それぞれ減収を見込んでいる。
 減収に悩む自治体にしても何も手をこまぬいているばかりではない。川崎市は市内企業の製品やJリーグチームのグッズなどの返礼品、世田谷区は子育て支援や福祉関連の寄付などで納税者の関心を引き付けようとしている。それでも現行の制度は納税者人口に比例して住民税が流出する仕組みとなっていることもあって、その効果にはおのずと限界がある。
 税収減によって懸念されるのは行政サービスの低下だ。世田谷区の保坂展人区長は「減収規模が学校改築2校分(1校30〜40億円)になりかねず、座視していられない段階に入った。このままでは区の運営がショートする」として、国に制度の改革を求めている。
 川崎市は近年、一般会計予算を編成する際、減収分を市債の償還に備える減債基金から手当する状況に置かれている。「この先返済する段になった時、事業の選択や縮小の必要が出るかもしれない」(財政部資金課)と予想。負債の付け回しをいつまでも続けるわけにはいかないことは認識している。
 これに対して総務省は「制度上、都市部の税収が減少し、地方に移転するのはやむを得ない。昨年、行き過ぎた返礼品競争を改めようと新制度に移行したところなので、当面は推移を見極めたい」(市町村課)と話しており、こうした事態を静観する構えだ。
 ふるさと納税の利用率は納税者の1〜2割程度と言われ、拡大ペースこそ鈍ってきたとはいえ、まだまだ利用者が増えることが予想される。予算をやりくりしてきた都市部の自治体もこれ以上の税収減に耐えることは難しい。この辺りで制度設計の抜本的な見直しを行ってもよいのではないか。
 年明け早々、横浜市と和歌山市で大規模な水道管破裂が発生し、またしても老朽インフラの深刻な状況が露呈した。厳しい財政事情を抱え、インフラ投資がますます不自由になりつつある。自治体は、納税者一人一人にこうした事態をしっかりと伝え、「自分ごと」として認識してもらうための努力が欠かせない。
 ふるさと納税制度導入の目的の一つには、「寄付文化の醸成」が掲げられている。限られた税金をどう有効に活用するのか―。国民と行政がもっと真剣に考える「学習」の機会や“仕掛け”こそ必要なのではないだろうか。

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