品確法運用指針の改正 社会の要請に応える時だ
2020/2/3
いいね | ツイート | 印刷 | |
0 |
品確法で求めている発注者の責務を果たすための共通ルールである「発注関係事務の運用に関する指針」(運用指針)が1月30日に改正された。改正前の運用指針は、歩切りやダンピング受注に代表される、当時の公共調達が抱えていた課題の改善に一定の役割を果たした。2020年度から運用される新しい運用指針は、公共事業と建設産業にどのような変化をもたらすのか。
品確法は規制や罰則を定めない『理念法』。運用指針は、14年の改正時に「公共工事の現在・将来にわたる品質確保」や「中長期的な担い手の確保・育成」といった品確法の基本理念を実現し、受発注者がその責務を果たすことを目的に、国が作成することとされた。
特に市町村は首長らの意向に左右されることが多く、法律の趣旨を理解しないまま、価格のみを重視した発注関係事務を実施することが少なくない。運用指針の策定には、こうした発注者に順守すべき共通のルールを具体的に示すとともに改善をも促し、国が是正を指導できる機能≠熏わせ持たせる意図がある。
例えば、14年の法改正では、公共工事の受注者が適正な利潤を確保できるよう、適正な予定価格を設定することを発注者の責務と位置付けた。運用指針には、この規定に違反するとして、当時は全自治体の4分の1が行っていた歩切りを禁止する規定が盛り込まれた。この規定を武器として、国交省は自治体に歩切りの廃止を働き掛け、2年弱で全ての自治体が歩切りを取りやめた。
昨年6月に成立した改正品確法では、現在の公共工事と建設業のテーマである「災害時の緊急対応の充実強化」「働き方改革」「生産性向上」「調査・設計の品質確保」が発注者の責務として追加された。法改正に続く運用指針の改正にも、前回改正時にはなかったこうした問題意識が落とし込まれている。
激甚化した自然災害が毎年のように日本列島を襲う中、被災地の応急復旧や本復旧には、入札契約手続きの迅速化や、一時的な需給のひっ迫にも対応できる柔軟な予定価格の設定が求められる。運用指針には、随意契約の活用、見積もりを活用した予定価格の設定など、社会環境の変化に対応するための規定も新たに追加されている。
建設業が最優先で取り組むべき働き方改革では、発注者に「適正な工期設定」と「施工時期の平準化」を求めた。実工期を柔軟に設定できる余裕期間の設定、中長期的な発注見通しの公表、債務負担行為の活用などが、それらの実現に近づける手段として、運用指針に示されている。
5年前の法改正とその後の運用指針策定には、競争の激化で疲弊した建設産業を再生する、という大きな目的があった。一方、今回の改正で追加された災害対応の充実、働き方改革、生産性向上には、今の公共事業の発注者と建設産業に対する社会の要請に応えるという共通のテーマがある。
改正された運用指針は、4月から本格的な運用の段階へと入る。公共事業、と建設産業の新しい姿を社会に見せるためにも、自治体をはじめとする発注者には、新しい運用指針を理解し、ぜひ、それぞれの公共工事に反映させてもらいたい。
関連記事
- 中建審 「工期に関する基準」勧告 (14:19)
- 第25回免震構造協会賞 受賞6作品を発表 (15:41)
- 第26回日本免震構造協会賞の募集を開始 (15:41)
- 建設工事に2000億円 JSの24年度事業計画 (15:29)
- りんかい日産建設水戸支店 コスモス認定 (15:05)
- 国交省4月人事 上下水道審議官に松原氏 (15:05)
- 国交省 22年度の施工実績業者は37・7万者 (13:14)
- 2月のセメントの国内販売は7・4%減 (12:53)
- 大手50社受注 5カ月ぶりに減少 (12:13)
- 2月の住宅着工 9カ月連続で減少 (12:09)
特集コーナー
このコーナーでは、入札情報関連の話題や建設業界注目の情報、工事ニュースなどを取り上げます。