現場ごとのリスクマネジメントを
2020/6/5
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ニュートン・コンサルティング副社長 勝俣 良介氏
新型コロナウイルスは、感染症に対する危機管理という新たな課題を企業に突き付けた。企業のBCP(事業継続計画)などリスクマネジメントに詳しいニュートン・コンサルティングの勝俣良介副社長は、建設業での対策としてまず、個々の現場ごとのリスクアセスメントに基づく「感染しない現場」づくりの必要を指摘する。また問題が長期化する最悪の事態を想定し、精神面を含む社員の健康管理などの対策を検討すべきと話す。(このインタビューはオンライン方式で行いました)
―新型コロナウイルスの感染拡大に伴い4月7日に緩急事態宣言が発令され、その時点で工事の一時休止を判断したのはごく一部のゼネコンでした。その後、現場関係者の死亡が発表され、一時休止の動きが拡大しました。一連の対応をどうみますか。
「危機的な状況に直面した場合は、リスク回避のためにまず大きくブレーキを掛け、徐々に緩めていくのが危機管理のベストプラクティスとされる。建設業は屋外の仕事なので大丈夫だろうという認識もあったのではないか。先行して休止を決めた企業の判断は英断だったと思う。しかし現場を止めたままにするわけにはいかない。元請けが現場を止めれば下請けに影響する。現場を動かし続けようとする判断も仕方がなかったと思う」
―建設会社は当面、どういった対策を講じていくべきだと考えますか。
「感染しない現場をつくらなければならない。手洗いやマスクの着用、アルコール消毒など一般的な対策にとどまらず、現場のリスクアセスメントとして、複数の関係者が一緒に現場を細かく見て回り、人がどこを触るのか、どこに密集するかを確認し、対策を話し合うべきだ。公共交通をできるだけ使わないなど、移動手段を工夫する必要もある」
「しかしどんな対策を講じても、感染者や、感染が疑われる人が出てくる場面は起こるだろう。現場内での感染もあれば、家族から感染する場合もある。濃厚接触者の特定や、場内の消毒など、感染が発生した場合の初動をどうするか、手順を決めて周知しておかなければならない」
―感染症の危機管理が組織の大きな課題になりました。
「これまで熱心にBCP(事業継続計画)の作成に取り組んできた建設会社も少なくないが、地震災害への対応が中心で、感染症対策は抜け落ちていたと思う。建設業は人がいて成り立つ仕事。就業者の高齢化が進んでいることを考えれば、建設業こそ、感染症のリスクをより真剣に考えなければならない」
―問題の長期化が懸念されます。
「対策の検討に当たっては、最悪の事態を想定するべきだ。緊急事態宣言はいったん解除されても、再び感染が拡大すれば再発令される。そんな状態が、半年から一年にわたって繰り返される事態だ。そうなった場合、どういったリスクが発生し、どう対策を講じるべきかを検討しなければならない。キャッシュフローなどとともに、精神面を含めた社員の健康が課題となる」
「また感染症の問題が続く中、地震災害や風水害が発生し、複合災害になる懸念もある。目の前の災害に対応するとともに感染をどう防いでいくかを考える必要がある」
(比良博行)
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