経営力と工期 タイムマネジメントが不可欠
2020/11/13
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適正な工期設定により、建設業の長時間労働を是正しようという取り組みが始まっている。“著しく短い工期”での契約の禁止が改正建設業法に位置付けられ、その目安となる『工期に関する基準』が国土交通省の中央建設業審議会で策定された。専門工事業を含む受注者からは、工期ダンピングの抑止や、不測の事態などの際の契約変更の促進などへの期待が集まっている。一方、こうした工期に焦点を当てた取り組みは、受注者に対して、工期短縮のためのタイムマネジメントや技術力向上のための取り組みを、これまで以上に求めることになるだろう。適正な労働時間を順守した上で、発注者が求める工期にどう応えていくのか。受注者には新たな課題が突き付けられている。
工期をめぐる取り組みの背景には、長年の懸案である建設業の担い手不足や、2024年4月に迫る時間外労働の罰則付き上限規制の適用がある。『工期に関する基準』では、契約時の“当初工期”の設定に当たり、自然要因や現場の状況、関係者との調整、資機材の調達、施工後の後片付けなど、工期に与えるさまざまな要素をあらかじめ考慮すべきとされた。
基準は公共工事だけでなく、民間工事にも適用される。額面通りに受け取れば、基準を活用しながら受発注者双方が責務を果たせば、すべての工事で適正工期が設定され、建設業の長時間労働は削減に向かうはずだ。
だが現実はどうなのか。単純に工期が長くなるとすると、トータルで考えれば受注できる仕事は減ってしまう恐れがある。会社の売上は減少し、従業員の収入の減少にもつながる。そもそも民間工事の発注者が工期の延長を簡単に許容できるものなのか。適正工期だからといって長い工期を提示した建設会社が、施主に選ばれるのだろうか。
中央建設業審議会のワーキンググループでは、民間発注者を代表したメンバーの一人が「建設業の働き方改革や適正工期の必要性について、受注者と契約関係のない住宅購入者やビルのテナントなどのエンドユーザーに理解を求めることは行き過ぎ」だと発言している。事業の採算性が問われる民間発注者がエンドユーザーを優先することは無理からぬことだ。
民間発注者からすれば、必要に応じて工期などの希望を伝えた上で見積もりを依頼し、受注者の提案を踏まえて交渉・契約しているのだから、災害の発生など不測の事態でもない限り、当初の契約が順守されるのは当然と考えるのだろう。
となると、労働時間の上限規制への対応と、発注者からの納期に対する要請のはざまで、受注者が目指すべきは、その両立ではないか。
他社との競争の中で経営の持続性を高めていくためには、適正工期を掲げると同時に、タイムマネジメント能力の向上によるきめ細かな工程管理や、技術革新による新しい施工や資機材の導入など、自らも工期短縮に向けた生産性向上に努めなければならない。
工期に関する基準は、建設業にとって“諸刃の剣(もろはのつるぎ)”だ。働き方改革を実現させるための武器となり得る一方で、工期短縮に向けた、これまで以上の努力が求められる。その切っ先は、自らにも向いていると考えるべきだ。
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