コロナ禍と公共事業―引き出せ最大限の経済効果
2021/3/8
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コロナ禍が経済と国民の生活に深刻な影響を与えている。総務省の1月の労働力調査によると、全国の就業者数は前年同月比0・7%減の6637万人で、10カ月連続で前年の同じ月を下回った。完全失業者は同23・9%増の197万人と12カ月連続で増加している。
産業別の就業者数では、営業時間の短縮などの影響を受けて前年同月比9・6%減の368万人となった宿泊・飲食サービス業などで減少が目立っている。一方、建設業は同4・8%増の481万人で、5・3%増の不動産・物品賃貸業に次ぐ水準で増加した。コロナ禍で雇用情勢が悪化する中、建設業が雇用の受け皿の役割を果たしていることが見て取れる。
全国建設業協会(全建)は、2021年度の事業計画を決め、「公共事業の円滑な施工」を柱の一つとして位置付けた。
公共事業を巡っては、激甚化・頻発化する災害に対応するとともに、インフラの老朽化対策を推進するため、20年度で終了する「防災・減災、国土強靱(きょうじん)化のための3か年緊急対策」に続き、約15兆円の予算規模の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」が21年度からスタートする。
加速化対策のための21年度の公共事業関係費は、20年度第3次補正予算と21年度当初予算を合わせ約8兆5000億円と、近年にない規模に上る。
この公共事業の執行は、国土強靱化とともに、コロナ禍で傷ついた経済を立て直していく上でも重要な意味を持つ。
全建では、公共事業の円滑な施工に向けて、47都道府県建設業協会と連携し、地域ごとに発注者と受注者とのタイムリーな意見交換を推進し、不要な不調・不落の発生の防止などに取り組む。
入札の不調・不落の背景には、予定価格が実勢価格に合わず、受注者が利益を出せない案件の存在がある。さらに、価格競争によって、適正価格であるはずの予定価格の9割程度でしか落札できない入札が目立つ現状も、円滑な施工を阻む要因になっている。
公共工事で低入札を排除し、受注者が適正に利益を出せるよう、入札制度改正を一層前に進めることが、いま強く求められている。しかし、発注者ごとの対応には温度差があるようだ。
国土交通省がまとめた入札契約適正化法に基づく実施状況調査(20年10月1日時点、速報値)によると、低入札価格調査基準価格と最低制限価格の設定範囲を「予定価格の75〜92%」にする、中央公契連の最新モデル(19年3月)を採用している市区町村は779団体で、全体の約5割だった。国交省では今後、モデルを大きく下回る基準の自治体の算定式を公表し、見直しを促す考えだ。
3月11日、東日本大震災から10年を迎える。震災復興の最前線に立ってきた仙台建設業協会の深松努会長は「建設業ではこの10年で、高齢化による職人の減少がさらに進んだ。今、同じ地震が東北で発生したとして、同じスピードで復興できるか疑問だ」と話す。
地域の雇用を維持し、経済を再生し、国土強靱化を進めるために、建設業の体力の強化と公共工事の円滑な施工は喫緊の課題だ。発注機関など関係者には、対策を講じる上で躊躇があってはならない。
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