さらなる賃上げの努力を
2022/3/7
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公共工事設計労務単価が10年連続の上昇となった。10年前と比べ、建設技能者の労務単価は約1・6倍に増えた。ここまで地道に続けてきた賃金アップへの取り組みが実を結びつつある。とはいえ、その挑戦も、いまだ道半ば。担い手の確保へ、賃上げに向けた努力を続けることが必要だ。
公共工事設計労務単価は、公共工事の予定価格を算出する際に使う建設技能者の日額単価。公共工事に従事する技能者の賃金(超過勤務手当などを除く)を調べ、47都道府県・51職種別に設定している。
3月から適用された最新の労務単価によると、全国全職種の平均は2万1084円、前年度比で2・5%増となった。コロナ禍の影響を考慮し、前年度を下回った単価を前年度単価に据え置く特別措置を適用しているものの、この措置が無かったとしても2%を超える上昇である。
国土交通省と全国建設業協会などの建設業主要4団体は「おおむね2%以上」を技能者の賃金上昇率の目標としてきた。その目標も達成し、斉藤鉄夫国土交通相は「官民一体で賃上げに取り組んできた結果だ」と評価する。
一方、他産業と比べると建設技能者の賃金水準は依然として低い。ここ10年でぐっと差は縮まったものの、製造業の生産労働者と同じレベルには届いていない。全産業の平均賃金と比べれば、さらに見劣りする状況だ。
2022年度には岸田文雄内閣が目玉とする「賃上げ促進税制」がスタートする。従業員の給与や賞与の総額などを一定割合以上に増やすことで、中小企業で増加額の最大40%、大企業で最大30%が法人税などから控除される。
少子高齢化などに伴う人材不足は、なにも建設業に限ったことではない。賃上げ促進税制は、他産業の企業にとっても賃上げに踏み切るきっかけとなるだろう。実際に約8割の企業が賃上げに前向きだという調査結果(帝国データバンク「2022年度の賃上げに関する企業の意識アンケート」)もある。建設業にとっては、ようやく追いついてきた他産業との差を埋めるペースが鈍化する可能性がある。
今回の公共工事設計労務単価の上昇を受け、建設業団体は「技能労働者の賃金引き上げの努力を続ける」(日本建設業連合会)、「技能者の賃上げや下請け企業との契約に適切に反映されるよう努める」(全建)といったコメントを発表した。21年の2%を上回る「おおむね3%以上」の賃金上昇率の目標も掲げた。
国の直轄工事では、建設技能者の賃金アップに向けて、賃上げを表明した企業を総合評価方式の入札で優遇する「賃上げ加点」も始まっている。一般管理費等を適切に反映させるための土木工事積算基準や低入札価格調査基準の改定も決まった。
これからの建設業には、こうした追い風を、いかに建設技能者の賃金引き上げつなげていくか、その実効性が問われている。人材の確保・定着には、賃金が大きな要素であることは言うまでもない。これまで続けてきた賃金アップの好循環を絶やさないために、そして建設業の担い手を確保していくために、官民が一体となったさらなる努力が必要だ。
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