物価異変@ 出口が見えない価格高騰
2022/5/25
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資材の急激な価格高騰が、建設業界のプレーヤーを翻弄(ほんろう)している。経済調査会がまとめた4月の建設資材価格指数(建築・土木総合)は、前年同月比29・3ポイントの大幅アップとなった。木材や鋼材だけでなく、生コンクリート、アスファルト、塗料など建設に関わる幅広い資材の価格が上昇。コロナ禍で停滞していた経済活動の再開やエネルギー価格の上昇に加えて、ロシアのウクライナ侵攻に対する世界的な経済制裁の動きもあり、物価の行く末を見定めることは極めて困難だ。
建設業界と特に関わりの深い資材に絞っても、木材は昨年後半の大幅な価格上昇(ウッドショック)以降、高止まりが続く。代表的な木材の一つである針葉樹合板は21年5月から22年3月までに価格が63%も高騰。ロシアは3月に日本を含む非友好国への木材禁輸を決めており、さらなる価格上昇が懸念されている。
鋼材価格の高騰も深刻だ。経済調査会は5月、異形鋼棒がおよそ14年ぶりに最高値を更新したとの「臨時情報」を発表。1年で価格が1・5倍を超す急騰ぶりだ。
こうした異常事態を受けて、日本建設業連合会(宮本洋一会長)をはじめとした主要な業界団体は政府に対策を要望。宮本会長は4月の総会でも「これまで経験したことのない状況」と危機感をにじませ、公共・民間の発注者に価格転嫁や工期変更への理解を強く訴えていく考えを示した。
政府は4月、原油価格・物価高騰を受けた総合緊急対策を決定。その一環として国土交通省は、適正な請負代金の設定、工期の確保を官民の発注者に要請した。特に価格については、国・自治体などの機関にはスライド条項の適切な運用、民間には民間建設工事標準請負契約約款に基づく代金額の価格変更に応じるよう求めた。
ただ、国交省が1〜3月に行った調査では、受発注者間契約の15%、元請け・下請け間契約の10%で物価変動に基づく契約変更条項が定められていないことが明らかになった。受発注者間で契約変更を要望しても2割超は受け入れてもらえず、いわば「門前払い」の状態だ。
請負金額が当初の30%を超えると設計変更を認めない、いわゆる「30%ルール」も自治体に根強く残っているとされる。
まして、民間発注者に対する契約見直しのハードルは高い。発注者と元請け、元請けと下請け、建材メーカーとの間で適切に価格が転嫁がされなければ、しわ寄せは弱い立場に向かいかねない。全国建設労働組合総連合が工務店を対象に行ったアンケートでは「廃業も視野に入れている」という声が寄せられた。
物価高騰と納期遅れが、処遇改善や働き方改革といった、建設業の魅力を高める取り組みを逆行させることがあってはならない。業界が一丸となり、国を巻き込んで対応する、今が正念場だ。
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