盛土崩壊を防ぐ 建設業の社会的責任
2022/7/1
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静岡県熱海市で土石流災害が発生し、7月3日で1年がたった。逢染川の最上流に当たる源頭部から流れ出した土砂は27人の尊い命を飲み込んだ。行方不明者1人の捜索は今も続いている。静岡県の推計によると、源頭部が崩壊し、下流に流れた土砂は5万5500立方b。長期間の雨が引き金になったとは言え、大量の土砂はなぜ崩壊したのか―。崩壊の原因とされたのは源頭部で不適正に施工された盛土だ。
大規模な盛土がいったん崩壊すれば、多くの人命や財産が奪われる事態を引き起こす。全国に広がったこうした不安を解消するため、政府は災害発生の直後に全国の盛土を総点検した。今年3月まで行われた点検結果によると、不適切に施工されていたり、適正に手続きが行われていなかった盛土は全国で約1100カ所見つかったという。
こうした危険な盛土が放置されてきた背景には、盛土に対する規制が用途や地域で異なっていたことがある。盛土を施工する土地が宅地や森林であれば、宅地造成規制法や森林法でカバーしているが、それ以外の用途では規制が十分ではない。法律が適用されない領域を条例でカバーする地方自治体もあるが、それでも一部に不適切な盛土が生じ、今回の事態を招く一因になった。
5月に成立した「盛土規制法」は、熱海市の土石流で明らかになったこうした課題を教訓として、法律や条例の間にあるスキマ≠埋めるための規制を目指して制定されたものだ。用途・地域を問わない一律の規制を課し、施工状況の定期報告、中間検査、完了検査を実施し、基準通りに施工された盛土かチェックする。無許可で施工した法人には、最大3億円の罰金を科す。
一方、この災害に被災県として直面した静岡県は、きょう1日に盛土規制条例を施行し、法律に先駆けて規制の強化に乗り出す。従来の届出制を許可制に改め、一定規模以上の盛土に県が定めた構造基準や環境基準への適合を求める。指定区域に限って許可制を導入する規制法と異なり、条例の対象は県全域だ。実効性を担保するため、県の監視体制も強化する。
法律と県の条例は、盛土の行為自体を対象とするため、特に規制が厳しくなるのは建設発生土の処分だ。副知事として熱海市の土石流災害の復旧と新条例の制定をリードした静岡県の難波喬司理事は「建設発生土の適正処分という建設業界の社会的責任も重くなる」と話す。
盛土対策を検討した政府の有識者会議のメンバーで、地盤工学が専門の群馬大学大学院の若井明彦教授は「(規制の強化で)『逃げ得を許さない』という姿勢を示すことが、不適切な行為の抑止力になる」とみている。
◇ ◇ ◇
一部の悪質な盛土で人命が失われ、そのことが盛土全体の規制強化につながりました。盛土を施工する建設業がこの規制にどのように備えるべきなのか、関係者に取材し、連載します。
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