■管内の課題と事業・体制
政令指定都市・浜松市と湖西市を管轄する当事務所は、沿岸地域から山間地域までの広範囲に及ぶ業務を担当しています。浜松市沿岸域では民間企業の多額な寄附金を契機とした防潮堤の整備に着手しており、北遠地域では地形が急峻(きゅうしゅん)で災害が生じやすい特徴もあることから地すべり対策等の砂防関連事業を主に実施しています。
当事務所では、魅力ある地域づくりを進めるため静岡県社会資本整備重点計画の三つの重点分野である「安全・安心」「活力・交流」「環境・景観」をキーワードとし、各事業の進捗を図っています。
河川事業では築堤や遊水地などの建設により治水安全度を向上させ、砂防事業では急傾斜地崩壊対策工事や砂防堰堤の建設などにより、土砂災害から地域の皆様の生命・財産を守ることで安全・安心な地域社会の実現を目指します。
また、下水道事業による生活環境の改善や道路・街路事業による道路網の整備など、地域を支える社会基盤のさらなる整備に取り組みます。
■本年度の事業費
総事業費は2014年度からの繰り越しを含め約180億円となる見込みです。内訳は河川・海岸が約69%、下水道が約10%、砂防が約9%、道路・街路が約5%、災害が約2%の割合です。そのほかは、港湾、漁港、建築などです。
■主要事業(浜松市沿岸域防潮堤整備)
天竜川から浜名湖今切口までの浜松市沿岸約17.5`における防潮堤の早期完成が当事務所の最大のテーマです。昨年度から沿岸整備課を設置して体制を強化し、事務所を挙げて取り組んでいるところであり、本年度も引き続き5`区間の施工を進めるとともに、馬込川東側の五島工区および浜名バイパス並走区間となる舞阪工区にも着手する予定です。
また、当工事の盛土および覆土に使用する土砂は、他工事の発生土を官民工事を問わず受け入れることにより、全体事業費の削減に努めています。
昨年に引き続き、5月の浜松まつりの期間に現場見学会を開催しました。多数の人たちが来場され、防波堤の大きさや1年間の工事の進歩を実感していただいたところです。
■河川・海岸関連事業
管内の管理河川は、1級・2級河川が70河川あり、延長は約483`です。浸水対策として都田川・芳川で広域河川改修事業、安間川で流域治水対策河川事業により重点的に築堤や遊水地の整備を進めていきます。
また、佐鳴湖については汚染度の指標であるCOD値が06年度までの6年間全国ワースト1を続けていましたが、09年度に全国ワースト5を脱出して以来、安定して改善傾向にあります。引き続き浜松市や地域住民とともに、流域が一体となった佐鳴湖浄化に関する取組みを進め、本年度からは新たに策定した行動計画に基づき、水質のみでなく生態系・親水利用・景観等を含めた総合的な取組を進めます。
遠州灘海岸では、昭和40年代と比べ最大で約230b海岸線の後退が見られており、03年10月に浜松篠原海岸で、埋め立てごみが流出する事態が発生しました。これまでに離岸堤3基の設置を完了し養浜により海岸浸食を最小限に食い止めておりますが、今後も国土交通省と連携して継続した養浜工が必要となっています。また、浜松五島海岸では、13年の台風18号により被災を受けた消波堤1基の復旧に取り組むとともに、近年、著しく浸食されている天竜川右岸河口部において突堤の整備を進めています。
■砂防関連事業
砂防関連事業は、砂防、地すべり、急傾斜事業を25カ所で引き続き実施し整備率を高めるほか、本年度は、新たに湖西市上田町特定利用斜面保全事業に着手し、掘り削残土は津波対策事業として命山建設に活用することと考えています。
13年4月に発生した天竜区春野町の門島地すべりについては、昨年度までに地すべり対策工事と河川災害復旧工事を完了させ、安全度の向上を図ることができました。本年度は引き続き、推積土砂の表面浸食と河川への流入を防ぐため、法面工などを実施します。
■港湾・漁港関連事業
浜名港では、老朽化した施設の長寿命化対策を進めます。本年度は、引き続き湖西市海釣り公園の突堤の長寿命化対策を進めるとともに、今切口東導流堤の補修工事に着手する予定です。
舞阪漁港では、老朽化している玄斎堀物揚場の補修工事を進めています。
■道路・街路事業
当事務所で管理する道路は、湖西市内の一般国道2路線、主要地方道2路線、一般県道6路線、計10路線で総延長約51`です。本年度末までに国道1号浜名バイパスの現道区間6.5`が国土交通省から新たに移管されます。本年度は、移管に伴う関係機関協議を進めます。
第一次緊急輸送路である国道301号の湖西市利木では天竜浜名湖鉄道高架部における狭あい線形不良区間の改築工事を進めています。また、一般県道新所原停車場日の岡線の湖西市岡崎では、歩道狭小区間の整備を実施し、安全な歩行空間を確保します。
■下水道事業
西遠流域下水道事業の14年度末までの総事業費は約1422億円で、2016年4月1日の浜松市への移管に向けて幹線管渠築造を進めるとともに、西遠浄化センターの1日最大汚染水処理能力を20万立方bに向上するための工事を完成させました。
本年度は、引き続き、馬込幹線2条目の築造を行うとともに、西遠浄化センターなどの既存施設の更新工事を実施します。
■住宅・営繕関連事業
昭和40〜50年代にかけて建設された大量の住宅ストックが老朽化しており、これらの施設を再生するため、県営住宅総合再生整備事業を進めています。本年度は、県営南平団地において全面的改善(1棟40戸)を実施します。
■建設業界に対して一言
防災・減災、老朽化対策、維持管理等インフラ整備の担い手として、建設業の果たす役割は増大しています。また、将来にわたり公共工事の品質が確保されるよう、建設産業の担い手確保・育成を目的とした入札の試行を本年度より行います。具体的には、地元女性技術者登用型、休日確保型の入札の試行、過疎地域におけるビジネス経営体を対象とした建設工事件数の拡大などです。一方、ダンピング防止対策として全ての入札工事で入札価格工事費内訳書の提出や県発注工事の下請け契約時に施工体制台帳提出の義務化を本年度から実施するなど、担い手3法改正に伴う多様な入札・契約方式を導入します。
最後に工事中の安全確保について、業界皆様方におかれましては、第三者事故も含め事故ゼロを目標に、なお一層の安全管理の徹底をお願いします。