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建滴 相次ぐ台風、河川整備費の十分な確保を

2011/9/26 東京版 掲載記事より

8月30日から9月5日にかけて、和歌山県や奈良県など西日本の広い範囲で総雨量が2000_を上回る記録的な大雨をもたらした台風12号。熊野川などが氾濫し、和歌山県那智勝浦町では高さ約10bの堤防が崩れるなどして、大量の水が沿川の家屋を襲った。
 台風本体から離れた関東・甲信地方でも、群馬県の伊勢崎市は9月1日午後8時までの24時間雨量が297・5_に達し、藤岡市や前橋市とともに観測史上最大の雨量を記録。群馬県内で220棟以上、埼玉県内では110棟以上が浸水した。
 死者・行方不明者はこれまでに100人を超えた。
 これに続く先週の台風15号では、庄内川の一部が氾濫した名古屋市で一時、100万人を超える住民に避難指示・勧告が出た。和歌山県田辺市の土砂ダムは溜まった水があふれ出し、下流域に水害が及ぶ危険性が高まった。
 ここ数年、全国で局地的な集中豪雨が発生し、そのたびに浸水被害が起きている。1時間雨量が100_を超えるケースもあり、1時間50_の降雨に耐えられるよう設計されているこれまでの中小河川の河道拡幅などでは、とても対応できない状況だ。
 また記録的な豪雨の場合、従来のハザードマップとは異なる場所で災害が発生する可能性もある。安全な避難場所の確保はもちろん、最悪の事態を回避する早い段階での避難勧告・指示が求められるだけに、想定以上の豪雨を見越した防災対策や避難体制の在り方の再検討が必要だろう。
 東京や大阪など大都市圏では、地下鉄や地下街の水没を防ぐ豪雨対策の強化が急がれる。例えば、河川や道路の地下空間にトンネルを設けて雨水を蓄える地下調節池の整備は用地交渉を伴わないため、河道拡幅に比べ飛躍的に早いスピードで治水安全度を高められる。
 大都市圏に限らず、ダムや堤防強化などを含めた効果の高い治水対策が欠かせないはずだ。
 東日本大震災での津波と同様、自然災害が常に予想した規模に収まる保証はどこにもない。一方で、たとえ「想定外」だとしても、被害を最小限に食い止める対策を講じる責務が政府にはある。
 民主党政権の樹立後、「事業仕分け」の掛け声で、災害対策予備費や国土保全など防災関連予算が減り続けてきた。今回の台風による被害は、ともすれば防災より行政改革を優先してきたことに対する警鐘ではなかったか。
 尊い生命と財産を奪い去る水害を繰り返さぬよう、国の2012年度予算編成に当たっては、地域の実情に応じた河川整備費を十分に確保すべきだ。