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建滴 全都道府県で暴排条例が施行 厳格な対応を

2011/10/3 東京版 掲載記事より

暴力団に対する利益供与などを禁止する「暴力団排除条例」が1日に東京都と沖縄県で施行され、全都道府県で同条例が出そろった。条例には、公共事業からの暴力団排除措置条項だけでなく、暴力団関係者からの建築工事の受注の禁止など、民間工事に規制を広げているものもある。
 暴力団排除の動きは、2007年の長崎市長射殺事件などをきっかけに政府の犯罪対策閣僚会議が排除姿勢を鮮明にしたことを背景に広がりはじめた。09年7月に佐賀県が暴力団関係者に対する不動産への不動産賃貸・売買を禁止する条例を制定したことを皮切りに、10月までに全国47都道府県で条例が施行されたことになる。
 各都道府県が施行した条例では、主に▽暴力団に対する利益供与の禁止▽不動産売買・賃借の禁止▽公共事業の入札からの排除措置―の条項を規定。都道府県の発注工事では、条例施行前から契約要綱を定め、暴力団に関係する企業の排除措置を講じている。
 1日に条例を施行した東京都のように、暴力団から下請け参入の強要などの不当介入があった場合、元請け企業に通報・報告を求め、正当な理由がなくそれを怠ると、その元請け企業も排除の対象となる制度を取り入れた自治体もある。
 民間工事も条例の対象であることを明確にしているのは兵庫県と山梨県。暴力団事務所に使用されることを承知で建築物の工事を請負った場合、勧告や企業名公表の対象としている。これに伴い、契約時に相手方が暴力団関係者でないことを確認する「表明・確約」の実施を努力義務とし、契約後に暴力団であることが判明した場合には契約を解除することも求めている。
 全国暴力追放運動推進センターの中林喜代司参与によると、暴力団が建設業に介入する場合、資材の購入などを強要する『接近型』と、業界も主体的に暴力団と密接に関わる『癒着型』などのパターンが見られるという。
 癒着型については従来から厳しい対応がとられていた。一方、「工期が間に合わない、古くからの『腐れ縁』がある、などの理由で暴力団と関わってきた建設業者も多かったが、接近型でも今後は厳しい対応が求められる」(中林参与)と警告する。
 暴力団関係者と交際しただけでも罰則の対象になるケースも想定される。実際、ことし3月には福岡県の建設業9社が暴力団と密接に交際していたとして、同県警は企業名の公表に踏み切った。 中林参与は、事業活動を現場では、直接的に暴力団に接するストレスや不安も高いだけに「条例を規制と捉えるのではなく、暴力団排除のツールと考えてほしい」とその予防効果を強調する。
 悪質なケースと認められた場合、企業名公表の罰則規定を設けている条例は多く、銀行融資の停止などで企業存続に関わる事態を招きかねない。暴力団との関係性を断ち切る厳格な対応がそれぞれの企業に求められる。