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建滴 業法改正先送り 品確法含め総合的な議論を

2012/2/6 中部版 掲載記事より

「建設産業の再生と発展のための方策2011」(方策2011)の具体化を見据えた建設業法改正案が、今通常国会に提出されないことが確実となった。技術者データベース(DB)の構築や業種区分の見直しなど、方策2011の提言をパッケージとして実現する上で不可欠な法案だった。それだけに今回の先送りは、待ったなしの状況にある建設産業の再生を足踏みさせてしまう恐れがある。
 建設業法は、建設工事の適切な施工の確保や発注者・下請けなどの保護を目的に、建設業許可や経営事項審査、技術者制度などを定めており、建設業とは切っても切れない法律だ。その改正をめぐっては、国土交通省が中央建設業審議会と社会資本整備審議会産業分科会建設部会の下に設けた基本問題小委員会が具体化を進めてきた。小委員会が1月27日にまとめた中間報告では、法改正が必要な技術者DBの整備や業種区分の見直しなどの方向性を明確化した。
 技術者DBは、建設技術者の適正配置と資質向上を両立する新たな仕組みと位置付けた。建設業法に基づく監理技術者はDB登録者の中から選定するよう義務付けることや、登録に有効期間を設け最新の法令知識の保持を更新の要件にすることなどが適切だとした。
 国交省は当初、今通常国会での改正が実現すれば、一定の周知期間を経て運用を始める方針だった。しかし、先送りによって、その時期の遅れは確実となった。現行の監理技術者資格者証や監理技術者講習があるため、実務上の問題が生じることはないが、技術者やこれから技術者になろうとする者にとっては、不安定な状況が続くことになる。
 また、中間報告は業種区分について、修繕と解体の業種新設が必要との考え方をにじませるとともに、既存の一式工事のうち一定の分野を施工できる新たな業種を政省令で柔軟に措置する仕組みの構築を求めた。現在の枠組みが40年間にわたり見直されてこなかったことを踏まえた提言だが、その実現にも法改正という壁が立ちふさがる。
 一方、社会保険未加入対策として、下請けへの保険加入指導を元請けに義務付けることを柱とした政省令は、3月から4月をめどに制定し夏ごろに施行するというスケジュールを維持する構えだ。
 今回の提出先送りは、方策2011の実現に向けた機運の盛り上がりに水を差すもので、痛手であることは間違いない。ただ、公共工事品質確保法などの関係法令を含め、建設産業を取り巻く法体系を見詰め直す時間が与えられたと、前向きに捉えることもできる。国土交通省は、早期提出への努力はもちろん、建設業法改正だけでは解決できない課題の克服に向けて、総合的な議論を進めていくべきだ。