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建滴

2016/6/18 

昨年10月に発覚した基礎杭工事問題を受け、「建設業の構造的課題」について議論してきた中央建設業審議会・社会資本整備審議会の基本問題小委員会が、22日に最終回を迎える。
 横浜市のマンションに端を発した基礎杭工事問題をめぐり、国交省が設置した対策委員会は、杭工事の施工データ流用を許した背景に建設業が抱える構造的課題があると問題提起。この問題の再発防止策にとどまらず、重層下請構造に代表される建設業特有の課題に業界が向き合うよう求めた。
 この提言を受けて発足した基本問題小委は、対策委が課題として挙げた▽元請け・下請けの施工体制上の役割と責任の明確化▽技術者・技能労働者の処遇、意欲、資質の向上▽民間工事における関係者間の役割・責任の明確化と連携強化―をテーマに議論を展開。22日の会合では中間報告をまとめ、各課題への対応策を提示する。
 施工体制を確認したところ、杭工事の1次下請けになっている企業が資材販売の代理店であり、実質的に施工に携わっていない実態が明らかになっている。基本問題小委では、こうした実態が施工に携わる元請け・下請けの役割を不明確にし、品質の低下を招くおそれがあると認識を共有している。国交省は、建設業法上の一括下請負(丸投げ)の判断基準を見直し、施工への「実質的関与」について、元請け・下請けに区分して解釈を明確化する考えだ。
 施工上のリスクを想定しにくい地中で施工される基礎杭工事で問題が起きたことから、民間工事の発注者・元請け間で、施工上のリスク負担に関する事前協議の枠組みを構築することも求める。民間工事で事前に協議すべき項目などを記した指針を速やかにまとめる。
 基礎杭工事問題では、元請けの監理技術者が負う統括的な管理責任や、監理技術者と下請けの主任技術者の役割が不明確になっている実情も浮かび上がった。中間報告では、監理技術者制度運用マニュアルを改正し、元請けの監理技術者と下請けの主任技術者の役割を明確化するとともに、品質管理の面でそれぞれが負うべき責任についても明示する。大規模工事で、監理技術者の役割を補佐する複数の技術者を現場に配置することも推奨する。
 改正品確法が成立し、丸2年がたった。この2年間、建設産業行政が打ち出してきたのは、改正法の基本理念である担い手の確保・育成に沿った施策がほとんどだ。基本問題小委の中間報告も、建設産業が「人材投資成長産業」を目指すといった、改正品確法の基本理念と同一軸上にある。しかし、基礎杭工事問題への対応の具体策には、この2年間で打ち出された施策と性質の異なるものが多い。
 基礎杭工事問題で明らかになった建設業の構造的課題は、関係者がこれまで認識しながらも、手を付けてこなかった施工体制における技術者の役割、元請け・下請け間の施工上の役割分担、重層下請構造など、建設ものづくり自体の在り方を問うものが少なくない。中間報告がまとまることで、その歩みを緩めることなく、建設産業の未来を見据え、行政と建設業界一体で課題克服への歩みを進めてほしい。