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目指すポジションと道筋示せ

2016/11/21 

政府は、17年度を初年度とする次期「地理空間情報活用推進基本計画(第3期)」を2月中にも閣議決定する。次期計画期間は、測量の地理空間情報高度利用社会におけるポジションを確立し、業務領域を民生分野へと広げていくことができるか否か、その“分水嶺”となる、極めて大事な5年となりそうだ。
 次期計画では、ビッグデータ、AI(人工知能)、IoT(インターネットを介したモノの相互接続・制御)技術などを活用した地理空間情報高度利用社会の実現を目指す政府の基本方針が示される見通しだ。
 現行計画期間のこの5年間で、携帯端末に実装されたアプリなどの利用を通じて誰もが位置情報サービスを享受するようになり、多くのビジネスマンにとってICT(情報通信技術)という言葉は身近な存在となった。国土交通省がi-Construction(生産性革命)を提唱し、建設生産システムにおけるICT技術の汎用化を推進できるのは、地理空間情報活用推進基本法が施行されてから、これまで10年に及ぶ、電子国土の実現に向けた基盤づくりの進展があったればこそ。
 その基盤づくりを支えているのは基本測量と公共測量であり、精度の高い成果を出し続けているのは、官民の測量技術者たちだ。文字通り「国土を測る(量る)」という、市民生活と経済活動の最上流に位置する情報を収集し、解析し、整理し、「国土の姿を描く」業務領域を担ってきたのは彼らだ。だが、ふに落ちないこともある。それは、自分たちの建設生産システムにおける役割や、社会における職業としてのポジショニングを、なぜ、主体的にアナウンスしてこなかったのか、ということだ。
 地理空間情報は今後、さらに多様化、高度化していく。フェーズだけでなく、そのスピードまでもが変わる。
 測量技術者がこうした状況に呼応し、自らの業務領域を広げていくには、測量で得た情報を市場のニーズに応じて三次元データ化する技術力とともに、ユーザーに提供する三次元データをコーディネートしたり、マネジメントしたりする能力が求められるようになる。
 疲労し、劣化しているのは何もインフラだけではない。人口減少・少子高齢社会に突入しているこの国の社会システムそのものが制度疲労を起こしている。
 この国では「生産性の向上」が今まで以上に求められるようになる。足りない労働力を補うために、ビッグデータやAI、IoTなどを高度に利用したサービス・製品が市場に供給されるようになる。当然、その過程では地理空間情報そのものに対する要求も高度化していくだろうし、その品質も問われるに違いない。
 では、いったい誰が多様化し、高度化する地理空間情報をマネジメントするというのだろうか。コーディネートすることができるというのだろうか。
 このまま何もせずにいては、通信・電気や自動車産業、そしてゼネコンの“下請け”に甘んじることになりかねない。測量業界は、測量技術者が獲得したい地理空間高度利用社会でのポジションとそのロードマップを、自らの手で示さなければならない。