建通新聞社

建設新聞読むなら建通新聞。[建設専門紙]

稼働広がるICT土工

2016/12/19 

3次元データを施工や検査に活用するICT土工の現場適用が急速に進んでいる。導入後、約半年余りがたった10月時点で、279件の直轄工事の現場でICT土工が稼働している。稼働中の現場の8割を受注しているのが直轄工事でCランクの地域建設企業だという。
 国交省は、建設現場の生産性を向上させるi−Constructionのトップランナー施策として、ICT土工を位置付けている。ICT土工は、ドローンやレーザースキャナーを使用した起工測量で得た3次元測量点群データと設計図面との差から施工量を自動算出し、3次元設計データなどで自動制御したICT建機で施工する。
 国交省は、A・Bランクが対象の予定価格3億円以上の工事については発注者がICT活用を指定し、Cランクを対象とする予定価格3億円未満の工事についてはICTを施工者の希望に応じて活用する。直轄工事では10月20日までに1080件以上をICT土工を採用した発注方式で公告し、279件が稼働している。
 稼働中の工事の中には、既にICTの活用によって大幅な工期短縮を実現した事例も報告されている。北海道開発局の道路改良工事を受注した企業は、積算上、71日を想定していた土工部分の工期を約2割短縮し、57日で仕上げた。ドローンを起工測量と出来形算出に活用したことで、測量と管理帳票の作成日数は半減したという。
 一方で、ICT施工の経験がない中小建設業にとってはハードルが高いのも現実。ICT土工の受注に必要な3次元ソフトウェアなどの購入費用は、500〜2000万円に上るという。3次元データの処理に習熟した人材の確保・育成が欠かせなくなっている。
 ICT施工に必要な機材の導入など、イニシャルコストを抑えるには、中小建設業にICT施工を浸透させ、流通を拡大することが必要になる。国交省は中小建設業にICT土工の効果を実感し、機材購入や人材育成への投資意欲を高めてもらおうと、普及加速事業をスタートさせる。
 この事業では、直轄工事よりも中小建設業向けの発注工事が多い都道府県を巻き込む。都道府県、建設業団体、測量・設計団体、建機メーカー、ベンダーなどでつくる協議会が都道府県発注のモデル工事でICT土工の効果を検証し、ICT土工のノウハウを関係者間で共有する。既に静岡県と茨城県に協議会を設置することが決まっている。
 中小建設企業の経営者が「i−Conの流れはいつまで続くのか」「投資を回収できる受注量を確保できるのか」と不安を覚え、投資に二の足を踏むのは当然だ。始まったばかりのICT土工には、積算が現場の実態と乖離(かいり)している、基準類が非効率を生んでいるとの指摘もある。
 国交省は、技能労働者が10年後に最大で93万人不足すると推計している。担い手不足は、生産性の向上で補わざるを得ない。しかも時間的な余裕はほとんどないにも等しい。だからこそ、中小建設企業の経営層への分かりやすいメッセージと動機付けが必要だ。きめが細かくて、丁寧な、受注者目線の施策を望みたい。