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完全週休2日を試行

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(2017/07/14)



 


完全週休2日を全国に先駆け試行

国交省中部地整の先進的な取り組み


 



国土交通省中部地方整備局は2017年6月、他の地方整備局が、土日や祝日を問わない現場休工日数が全体の7分の2以上とする「週休2日相当」を試行するところ、毎週土日と祝祭日を完全に休工とする「完全週休2日」の試行に踏み切る方針を発表した。日本建設業連合会との意見交換の中で、同連合会の考え方の方向性、取り組む意思をくみ取り、全国に先駆けて試行する方針を固めた。ここでは、中部地方整備局の試行内容を示す。





同局では、今回の新しい試行に際して、まず「完全週休2日」と「週休2日相当」の定義を示した。「完全週休2日」は、対象期間中の各週において休工対象日に現場休工を行うことと定めた。ここで示す休工対象日は、土曜日、日曜日、祝祭日と限定しており、「週休2日相当」との違いはこの点にある。そして、天候(降雨・積雪など)により休工とした日は休工とカウントしない点も相違点である。

対象期間とは、工事開始日から工事完了日までのうち、非対象期間を除いた期間とした。この非対象期間は、準備期間、後片付け期間、夏季休暇(3日間)、年末年始休暇(6日間)、工場製作のみの期間、工事事故などによる不稼働期間、天災(豪雨、出水、土石流、自身など)による突発的な期間、その他、受注者の責によらない休工または、現場作業を余儀なくされる期間と定めた。(※表1参照)。



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表1





一方、「週休2日相当」は、対象期間中に7分の2以上の現場休工を実施することと明示した。 休工対象期間は、土曜日、日曜日、祝祭日を問わず、対象期間の7分の2以上(小数点以下切り下げ)の日数とし、天候(降雨・積雪など)により休工した日は、休工とカウントするとした。

対象期間、非対象期間の定義は「週休2日相当」と「完全週休2日」との違いはない。休工対象日を土曜日と日曜日、祝祭日に限定しているか、問わないとしているかが大きな相違点である。

そして、今回の試行での休工は、現場事務所での事務作業も含め、作業を行わない現場の完全閉所とすることと定義付けた。(※表2参照)






表2






同局では、「完全週休2日」「週休2日相当」とも、総合評価では加点しないが、達成できなくてもペナルティーを課さないことを明示した。また、週休2日を実施した工事を対象に、安全管理や営繕費といった共通仮設費、または、現場技術者の給与などを含む現場管理費を補正計上することも決めている。

「完全週休2日」は、土日・祝祭日の合計日数以上の休日(現場休工)を毎週確保すること。対象期間中の全日数に対する現場休工日数の割合が7分の2を超えた場合に評価する。対象期間中の全週間数に対して、休日対象日(土日・祝祭日)を現場休工とした週間数の割合が70%を超えた場合に「取組証」を発行。取組証取得者には、次年度の同局発注工事でインセンティブを与える。また、実施率に応じて間接費を計上するとともに、工事成績で評価する。本年度は本官工事を対象に発注者指定型で14件、受注者希望型で2件を発注する。


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一方、「週休2日相当」は、土日・祝祭日を問わず、対象期間の7分の2以上の現場休工を実施すること。対象期間中の全日数に対する現場休工日数の割合が7分の2を超えた場合に評価する。総合評価では加点しないが、達成できない場合もペナルティーは課さない。また、実施率に応じて間接費を計上するとともに、工事成績で評価する。本年度は分任官工事を対象に発注者指定で47件、受注者希望で177件を発注する意向だ。7月1日以降の公告案件から試行することを決めた。  同局では、今回の取り組みに関して、他の地整では本官工事、分任官工事とも「週休2日相当」として試行する。本官工事で「完全週休2日」を実施するのは中部地整だけとしている。また、「入り口での加点措置はないが、出口でのペナルティーを削除した。適正な工期設定、適切な費用計上を通じて、発注者と受注者との間で工事工程を共有し、働きやすい建設現場の実現に向け取り組みを進めていきたい」(中部地整)と話す。

 



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完全週休2日制工事 3県の取り組み

さまざまな試みで課題抽出


 



建設産業が地域に欠かせない存在であり続けるためには、経営体質の改善とともに、担い手の確保・育成の確実な実現が不可欠であり、その一施策として「完全週休2日制」が重要な施策として位置付けられている。国が先行して週休2日制工事の試行に取り組む中、東海3県では、愛知県が2015年度から、三重県が16年度から試行を実施し、岐阜県が17年度からスタートする。各県の試行には、工事成績への加点や間接工事費の補正の有無などで条件設定に違いがあり、施工者側にとっても、さまざまな試みで多面的な課題が抽出されるものと期待される。そこで、今回は3県の試行状況などに焦点を当てた。



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愛知県17年度は23件予定「受注者申し出」も開始





 愛知県では2015年度から週休2日制の取り組みを始めた。15年度は、モデル工事として3件を発注。モデル工事では、土・日曜日を休日とした施工計画を策定し、土・日曜日の施工が必要となった場合には、振替休日を取得することを原則とした。16年度は県内全域に拡大。「完全週休2日制工事」として18件を発注した。土・日曜日を休日とし、連続した2日間の休暇の取得を目指すこととした。予定価格の積算に当たり、補正などは行わない。また、工期の設定も通常の工事と変わらない。16年度からは、土・日休みを90%以上達成した場合、工事成績に加点することにした。90%を下回った場合でも減点はしない。18件の工事のうち8件の工事が完了しており、このうち7件が90%を達成している。

17年度も取り組みをさらに拡大する考え。16年度の件数を上回る23件を発注する予定だ。発注者指定の23件に加え、受注者申し出による取り組みも始める。受注者申し出の場合でも、同様に工事成績に加点する。減点はない。

これまでに実施した受注者へのアンケートによると、日給で働く下請けの技能労働者は週休2日になることで収入が下がるため、他の現場で働くことになるといった課題も指摘されている。労務単価の引き上げが技能労働者の賃金増加に直結するとは限らず、こうした課題をどう解決するかを今後検討していく必要がある。また、建築工事では、工種が多く、土・日曜日にしか作業ができないものもあるため、週休2日制がなじまない。愛知県の週休2日制工事は全てが土木工事。国土交通省でも建築工事では実施していない。建設業界全体で週休2日制を実現していくためには、いずれ建築工事でも実現できるよう検討していく必要があるだろう。



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岐阜県 評定点に最大2点加点 土、日曜日6〜7休達成





 岐阜県県は、「週休2日制」のモデル工事を2017年度から試行する。各土木事務所が対象工事を2件〜3件程度選出し、17年度は計29件で、7月から公告を始めている。岐阜県では、同工事に対するインセンティブとして、4週のうち原則土、日曜日6〜7休を達成した場合、工事成績評定点に最大2点加点される。現段階で間接工事費の補正は行わない。

週休2日制モデル工事の対象は、原則4000万円以上の土木一式工事となる。同金額を下回る工事の場合は、工期などにも配慮し、各事務所が判断する形だ。国土交通省では、週休2日の定義を「毎週の土、日曜日と祝祭日を完全に休工とするもの」としているが、岐阜県では、休日の判断は施工現場が閉所していて、元請けの主任技術者および現場代理人が休暇を取っている日で、原則は土、日曜日が対象だが、平日への振り替えは可能とした。


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対象期間は「路上工事抑制期間」を除く「工事開始日」〜「工事完成日」までとなる。

受注した企業は、工事着手前に予定工程表を、工事完成後には休日が確認できる実施工程表を提出することになる。これを基に、対象期間の土・日曜日の総日数を分母として、期間内の総休日数を分子とした達成率を算出する。高達成率(87.5%以上)の場合、最大2点が工事成績評定点に加点され、達成率が低い(50%未満)と1点減点となる。

また、週休2日制モデルに現場環境改善モデルも付帯した工事も発注されるという。  現場環境改善モデルには特にインセンティブがあるわけではなく、担い手確保の一環として要領を定めた。対象工事では、洋式便座や水洗機能などを備えた男女別の快適トイレの設置と、作業員が快適に休憩できる標準仕様の建物と、そのために備える備品を設置することなどを満たす必要がある。

 



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三重県 間接工事費積算時に補正 工期設定などを検証





 三重県は、「完全週休2日制工事」の試行工事を2016年度から実施し、17年1月に電線共同溝工事(伊勢市)、3月に道路改良工事(松阪市)を発注した。17年度下半期の工期設定となっており、工事終了後に実施状況などを検証する。

試行工事のポイントを見ると、@工期面では、従来の標準工期(4週8休)に対して工期を「1.2倍」に延長した(工期などの15年度の実態調査で工期延長の工事が多いことから、標準工期を改定し、17年度から1.2倍に延長した工期を標準とした)A工事受注後、工程計画を協議し、工期内完成が見込めない場合は工期変更を受け付けるB現場閉所をするため、休日取得は下請を含めたすべての作業員を対象としたC工期設定の検証や週休2日の普及に向けた課題を把握することを目的とするため、週休2日が確保されなくても工事成績点のペナルティーはしない―ことなどが挙げられる。

試行の検証は、工事完了報告書の提出までに元請、下請業者からアンケートを求め、1カ月程度をかけて課題点などを抽出する。なお5月末時点では、休日の取得は計画通りとしている。

17年度の試行では、各建設事務所など12事務所で、発注者指定型(指定型)、受注者希望型(希望型)の二つのタイプで試行する。指定型は各事務所で1件以上を求める。希望型は、災害復旧など工期的制約などがある工事を除いた土木工事で実施し、入札公告で指定型か希望型を明記していく。対象工事の金額の枠は設けない予定。なお、週休2日制促進のため、完全週休2日を確保した場合、清算時に間接工事費の補正を実施する。

今後の試行で、工事規模・種類、企業規模の事例を増やすことで、多くの課題を抽出し、業界側と協議していくことになる。



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週休2日モデル試行・電線共同溝工事(伊勢市)




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●「完全週休2日制」への課題●

「完全週休2日制」に向けての現状の課題を見ると、1点は工期を守るために土曜日の稼働が常態化しており、目標レベルと実態とのかい離が大きい点が挙げられる。もう1点は、技能労働者の多くが日給制という雇用形態であるため、週休2日制に伴う実質的な給与減を補てんする策がないことが挙げられる。この他、現状の工期について、用地交渉などで着手できない期間も含まれる「見かけ」の工期になっている点、工期延長による技術者の確保の必要性など、週休2日制で予測される変化や損失を補えない実状が懸念されている。そこで、急激な変化は避け、4週8休への達成度を高めるなど段階的な導入を図るべきという意見もあり、今後、行政と業界との協議の中で、確実な手法を探っていくことになる。






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