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(2018/08/31)
【静岡県】地震・豪雨など安全対策再認識へ
ここ数年、全国各地で地震や豪雨による洪水、土砂災害が発生している。2018年6月18日に大阪府北部を襲った地震、7月の西日本豪雨は大きな被害をもたらした。
大阪府北部の地震では、ブロック塀の倒壊によって重大な被害が出た。被害が出たブロック塀は、補強コンクリートブロック造か組積造で、いずれも建築基準法の構造基準に適合していなかった。これを受けて、全国の地方自治体は学校施設などのブロック塀等を点検・調査し、基準に適合していないものについて撤去・改修などを進めている。静岡県でも県内の自治体が点検、撤去などの対応を進めている。
また、日本列島を毎年襲う大規模水害の中でも、極めて甚大な被害をもたらした西日本豪雨。国は「激甚災害」に指定した他、地方自治体に「大規模災害時の災害査定の効率化・(簡素化)及び事前ルール」を初めて適用、災害復旧事業に随意契約を活用するよう通知するなど緊急対応の施策を打ち出した。
静岡県の被災地対応では、広島県呉市に人的支援として、7月9日の先遣隊(災害支援チーム)以降、8月3日までに延べ210人を派遣している。派遣チームは、呉市災害対策本部、避難所などの運営補助、住家被害認定調査や罹災(りさい)証明書発行の補助、健康相談、ため池緊急一斉点検などに当たっている。
9月1日は「防災の日」。2018年度の静岡県総合防災訓練が9月2日に「静岡市・静岡県総合防災訓練」として、静岡市内、富士山静岡空港で行われる。
特集では、大規模地震だけでなく豪雨災害などに対する安全対策を再認識するため、静岡県地震・津波対策アクションプログラム2013の進捗状況、県内自治体の津波対策、ブロック塀等への対応などをまとめた。
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静岡県東部・中部・西部地区 各自治体の防災対策
【沼津市】ブロック堀20施設23カ所撤去
公有施設敷地内のブロック塀緊急点検を実施した。高さや控え壁について建築基準法上の基準を満たしていない箇所が20施設23カ所(その他学校関係は14カ所有)見つかった。今後の対応方針は、原則として基準に適合しないブロック塀は全て撤去、また隣地との境界にある場合は、隣地所有者と協議をした上で対応を図っていく。
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【裾野市】
市内の6小学校と5中学校敷地内にあるブロック塀の緊急点検を行い、二つの小学校で倒壊の恐れのある箇所が見つかった。これについてはすでに対応を済ませており、引き続き、学校近辺の通学路に関して調査を行っている。結果がまとまり次第、対策を講じていく予定。
【御殿場市】ブロック塀を有する学校は小学校11校のうち5校であり、そのうち、対策が必要な学校は富士岡小学校と印野小学校の2カ所で見つかった。富士岡小はプールのシャワー部分の隔て壁(延長6.2メートル)、印野小はグラウンド南側駐車場外周部(延長60メートル)。共に控え壁がなく、富士岡小は撤去を終え、印野小は危険性は低いものの、今後撤去し、フェンスに改修する予定。幼稚園や保育園などでは西幼稚園で見つかり、倒壊する危険性があるため、7月にフェンスへと改修した。
【富士市】倒壊の可能性ある構造物調査
市内の公立小中学校を対象にブロック塀調査を行った。調査の結果を基に早急に撤去が必要な富士第一小学校(本市場280-27)など7校の安全対策を完了した。
また、地震で倒壊する可能性があるブロックの構造物、石碑なども調査しており、各校と今後の対策を協議している。安全対策に必要な事業費は9月補正予算で確保し、石碑については、撤去や移動は難しいため、フェンスなどで囲む方法も検討している。
【富士宮市】
市内の公立小中学校を対象に実施したブロック塀調査の結果、危険度の高い箇所は早急に撤去、改修する。
黒田小学校、貴船小学校、富士宮第四中学校プールのブロック塀は最優先に撤去改修した他、建築基準法の安全基準を満たさないブロック塀は撤去、改修する。また、目隠しフェンスへの改修を検討している箇所もあり、補正予算や2019年度で確保する。
【三島市】
全小中学校のブロック塀を調査した結果、小学校8校、中学校1校で改修が必要なブロック塀が見つかった。このうち、道路に面しているのが2カ所、プールのシャワー壁が7カ所などで、道路に接しているブロック塀から優先的に改修に着手した。他の公共施設についても目視点検を行い、安全性が確保できないブロック塀が17施設で存在、人が入らない場所ではあるが対応を検討している。
【伊豆の国市】
小学校が6校、中学校が3校あり、全ての小中学校でブロック塀がない。他の公共施設の調査結果では、道路に面しているブロック塀で基準に満たないブロック塀はなかったものの、民地(駐車場)に接しているブロック塀で基準に満たないものが1カ所存在した。この1カ所については9月補正で予算を確保し対応する。
【伊豆市】天城中など2校、来年度中に撤去
全ての学校施設で緊急点検を行った結果、中伊豆小学校(八幡158-2)、天城中学校(月ケ瀬853)、天城小学校(青羽根47)の3校で建築基準法上の基準を満たしていないブロック塀を確認した。
中伊豆小ではプールサイドで確認されすでに撤去した。天城中と天城小ではブロック塀のある箇所を立ち入り禁止にしており、来年度撤去する。
【熱海市】
全ての学校施設で緊急点検を行い、そのうち4小中学校で建築基準法上の基準を満たしていないブロック塀を確認し、今後撤去する方針だ。
対象は桃山小学校(桃山町6-5)、網代小学校(網代195)、泉小中学校(泉280)、初島小中学校(初島219)。
【伊東市】
市内小中学校15校と幼・保育園14園で点検を実施した。
建築基準法上の基準を満たしていないブロック塀は確認されなかったが、川奈小学校(川奈1083-1)と富戸小学校(富戸1203-1)で校舎と体育館をつなぐ渡り廊下に延長30〜40メートルのブロック塀があり、倒壊する危険性があるため今後ブロックの両側を補強する工事を実施する。
【下田市】
小学校7校と中学校4校で点検を行ったが、建築基準法上の基準を満たしていないブロック塀はなかった。しかし通学路線上にある民家で数カ所倒壊の危険性があるブロック塀を確認したため、所有者に改修や撤去などの対策をするよう働き掛けている。
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【静岡市】危険・不適合ブロック堀年度内対応
静岡市は、6月18日の大阪北部地震のブロック塀倒壊による死亡事故を受けた文部科学省の指示により、静岡市教育委員会は即時に小中学校のブロック塀の有無を確認。高さ、控え壁の有無、傾き、ひび割れ、鉄筋の状況、根入れの状況の項目を調査した。
29日に結果を発表、126校のうち、基準に合わない、または危険と判断したブロック塀は小学校5校、中学校5校の計10校だった。撤去、または改修によって早急な対応を進める。
その他の市有施設1786施設も、教育委員会と同様の調査を実施、7月20日に公表した第1次調査によると176施設にブロック塀の存在を確認、うち89施設を危険、または不適合の要対処ブロックとした。1日付で第2次調査を公表、ひび割れ、傾きのある「危険コンクリートブロック」45施設、その他の項目に課題のある「不適合ブロック」33施設の78施設について、基本的に2018年度内に撤去、塀の必要な施設は3段以下、80センチ以下に抑えるか、金網フェンスやコンクリート壁などに改修していく。今後は、ブロック塀を用いない方向でいる。
民間施設は、課税対象ではないことや、設置の報告義務もないため把握が難しい状況。旧耐震へ建築施設の対応状況などから、おおむね6万戸のブロック塀の存在が推測される。これらに対しては、自治会や静岡、清水の大工組合、エクステリア団体を通じて補助制度などの周知に努める。一方、問い合わせに対しては、郵送による文書で危険性を訴えることにしている。
【牧之原市】年度内全箇所改修完了へ
牧之原市では、各担当所管で調査した結果、安全基準外が3カ所、ずれ2カ所、傾斜1カ所の計4施設6カ所で改修の必要性が認められた。内訳は地頭方小学校や学校給食センターの教育施設が2施設3カ所、保育園・幼稚園が1施設1カ所など。7月中旬から着手した箇所もあるが、遅くとも2018年内には全箇所とも着手し、18年度内には完了する予定だ。
【島田市】小・中25校緊急調査、要改修箇所無し
島田市は、小学校18校、中学校7校の計25校の義務教育施設を緊急調査したが、改修箇所は認められなかった。
【焼津市】港中など5校でブロック堀を撤去
焼津市は、小学校13校、中学校9校を対象にブロック塀を緊急調査し、港中学校(田尻北584)など5校でコンクリートブロックを撤去する。対象は港中学校の他、和田中学校(田尻1984)、大富中学校(中根1-1)、港小学校(石津港町40-2)、焼津南小学校(焼津5-5-1)。
改修ではなく撤去するのは、年数の経過によって倒壊のリスクが高まるため。主に道路沿いにあるもので、撤去後は基礎部分をそのまま残し、上部に高さ1.2メートルから3メートルのメッシュフェンスを設置する計画。
【藤枝市】保育園・中学校でブロック堀改修
藤枝市は、ブロック塀がある保育園・幼稚園1園、小中学校12校を対象に設置状況を確認し、劣化、基準を超える高さ、控え壁設置の必要性などが挙がった保育園1園、中学校2校で改修を実施した。
岡部みわ保育園(岡部町内谷1629-1)は、クラックが見られ、高さが一部基準を超えていることから、既存のブロックを撤去し新たにネットフェンスを設置した。
青島中学校(青葉町1-7-1)は、テニス場北側にあるブロックを一部取り壊し、目隠しフェンスを設置。青島北中学校(南駿河台1-11-1)は、屋外トイレ前の目隠し壁に控え壁を設置し、安全性を高めた。
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【掛川市】掛川モデル2工区 防潮堤整備を継続
掛川市は、「掛川モデル」として大東、大須賀の2工区で防潮堤整備を進めている。2工区の計画総延長は9.7キロ。天端部の幅は25メートルで勾配は2018年度。
大須賀工区は、計画延長4.8キロ。17年度末までに延長1080メートルの整備を完了した。大東工区は計画延長4.9キロで、17年度末までに延長140メートルを整備した。
18年度は、大須賀工区の大渕地区東大谷川の東側で延長370メートル、高さ11.5メートル、約114000立方メートルの盛土工を計画している。現在、用地取得を進めており、18年度中に工事を発注する予定。設計は不二総合コンサルタント掛川営業所(掛川市)が担当した。17年度に発注した大東工区の浜野工区(延長約350メートル)は9月末、大須賀工区の沖之須工区(550メートル)は18年度末までに完成する見通しだ。
【袋井市】湊地区防潮堤整備を推進
袋井市は、浅羽海岸(延長約5.3キロ)のうち、延長約4キロを対象に静岡県と連携して防潮堤の整備を進めている。海岸防災林に市が砂丘造成盛土を実施し、県が生育基盤盛土工などを行う計画。18年度は湊地区内で延長50メートル、高さ10メートル、土量約900立方メートルの整備を進めている。設計は袋井市建設課が担当した。防潮堤全体の完成は28年度を目指している。
【磐田市】
磐田市は、14年度から沿岸域の防潮堤整備に着手した。全体計画では、天竜川河口から福田漁港までの延長約11キロを竜洋海洋公園工区(計画延長1.6キロ)、海岸保全工区(計画延長1.4キロ)、海岸防災林工区(計画延長7.1キロ)、太田川右岸工区(計画延長0.3キロ、完成済み)の4工区に区分し、高さ(海抜)14メートルの防潮堤を整備する。
18年度は竜洋海洋公園工区で延長204メートルの盛土嵩上げ工を実施し、残る延長約900メートルは19年度以降に整備する意向だ。また、海岸防災林工区のうち竜洋工区は、17年度に完成した箇所の西側延長217メートルを対象に海抜12メートルの盛土工を実施。福田工区では、福田公園東南の松枯れ区域延長240メートルを対象に海抜12メートルの盛土工を行い、19年度以降も整備を継続する。
【浜松市】遠州灘沿岸防潮堤土砂供給を継続
浜松市は、南部地域の遠州灘沿岸で県が整備を進める防潮堤に必要な土砂の供給を継続する。また、災害時に市民が迅速に情報を入手できる環境を整備するため、災害情報伝達手段整備事業を18年度から5カ年で実施する。秋ごろに事業者を決める予定。
【湖西市】命山9月に実施設計委託
湖西市は、新居町の上田町地区に命山、新居町浜名の高師山地内に津波避難施設を建設する。命山は、9月に実施設計を委託し19年度の工事着手を目指す。高さは約13メートル。津波避難施設は建設予定地と進入路の測量を10月に委託する見込み。施設は鉄筋コンクリート造で、高さは約10メートルを想定。19年度の実施設計、20年度の工事着手を予定する。
179のアクションを推進
〜地震・津波対策アクションプログラム2013を追加・見直し〜
静岡県の防災・減災施策の要となっている「静岡県地震・津波対策アクションプログラム2013」。南海トラフ巨大地震などの大規模地震発生を想定して、2022年度までに想定される犠牲者を8割減少させることを目標に176のアクションを進めていた。県は、策定から4年が経過した17年度、88%の施策が順調に進んでいる中、課題が残る施策もあるとして、アクションの追加・見直しを行い、現在は179のアクションを推進している。
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遠州灘沿岸「静岡モデル」の防潮堤整備
減災目標犠牲者8割減の達成に向けて県は、静岡方式に基づく地域特性を生かしたハード・ソフト一体の施策を展開していくとした。ハード整備では、遠州灘沿岸がレベル2津波に対応する「静岡モデル」防潮堤の整備を進める。駿河湾沿岸では、想定される被害が大きい箇所を優先してレベル1津波に対する防潮堤整備を進める。伊豆半島沿岸では、レベル1津波に対して防潮堤整備だけでなく避難優先の対策も含め、地区協議会の方針に沿って方向性を決める。
追加したアクション3項目は、(1)高台・浸水域外等への避難経路の確保(2)津波避難施設等への避難誘導看板の整備(3)津波避難施設等の夜間視認性の確保−。3項目いずれも22年度末の完了を目標としている。
また、津波対策施設整備の「海岸堤防の高さ確保」の整備目標見直しでは、数値目標を県全体の整備率に変更。さらに、地区協議会の検討が進んできたことから、結果を指標に反映させる。見直し後は、防護が必要な海岸線延長290.8キロに対して、既設整備済み170.2キロ(58%)に伊豆半島沿岸の「新たな整備をしない方針」の海岸16.9キロ(6%)、アクションプログラム目標の9.9キロ(4%)を加えた68%を22年度末の整備率目標とした。
「静岡方式」では、レベル1津波に対する海岸堤防の整備を進めるとともに、レベル1を超える津波に対する安全度の向上を図る2階建ての整備≠行っている。浜松市沿岸、中東遠地域の防潮堤整備が進む遠州灘沿岸については、現状の防護レベルがレベル1津波に対応していることから、地域の合意形成を踏まえレベル2津波による被害の軽減を図る「静岡モデル」の防潮堤整備を進めている。また、駿河湾沿岸では現状の防護レベルがこれまでの3次想定津波に対応していることから、背後地の状況を踏まえ、想定される被害が大きい箇所からレベル1津波に対応した防潮堤整備を進めている。伊豆半島沿岸では、50の地区協議会を設けて地元の意見、状況にあった対応の方向性を検討している。
県立45校施設など撤去 ブロック堀等の安全対策
静岡県は7月、大阪府北部地震と7月豪雨災害を踏まえた緊急対応を発表した。大阪府北部の地震を踏まえたブロック塀などの安全対策としては、県有施設、県立学校のブロック塀などの安全性調査を踏まえて、公道との境界など人の往来がある場所に位置する54施設2145メートルを撤去する。対応は「9月補正を待たずに行う」とした。
また、県教育委員会が県立学校施設についてブロック塀などの緊急調査した結果を発表。今後、対策が必要なブロック塀などは計2266メートル(45校)あり、外観点検で対策が必要と判断したブロック塀など1293メートルについては、既定の修繕予算で各箇所の状況に応じた対策(解体や改修など)を、秋ごろまでをめどに完了。内部点検で対策が必要と判断したブロック塀など973メートルについては、9月補正予算案に対策予算を計上し、2018年度内に解体や改修などを完了する予定とした。
県教育委員会では、学校敷地内にある全てのブロック塀などについて、第1段階として外観に基づく点検を行い、その結果、高さや控壁などの基準に適合せず対策が必要なブロック塀などが1293メートル(高校798メートル、特別支援学校495メートル)あることを確認。各箇所の状況に応じて対策を秋ごろまでに完了する予定だ。また、第2段階として外観点検で問題のなかった塀などについて、鉄筋等のブロック内部の点検を行った結果、対策が必要なブロック塀などが973メートル(高校898メートル、特別支援学校75メートル)あった。必要経費を9月補正予算案に計上し、年度内に対策を完了する予定。工事発注については、各学校から行われる。
対策が必要なブロック塀などがある県立高校、県立特別支援学校は次の通り。
【県立高校】
下田、松崎、稲取、伊東、伊東高校城ケ崎、伊東商業、伊豆中央、田方農業、三島南、御殿場、御殿場南、沼津西、沼津城北、沼津工業、富士東、富士宮東、富士宮北、富士宮西、清水東、静岡、静岡東、静岡農業、焼津水産、藤枝東、藤枝北、島田工業、金谷、川根、相良、掛川西、掛川工業、池新田、小笠、遠江総合、磐田農業、浜松西、浜松東、浜松大平台、浜松工業、浜名、浜北西、佐久間分校
【県立特別支援学校】
沼津視覚、静岡視覚、浜松視覚
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