竹中工務店が新たに開発した「竹中ハットダウン工法」は、昇降フレーム・天井クレーンや開閉式屋根などで構成する「移動式解体工場(ハット)」をビルの最上部へ設置し、各階を解体しながらハットを降下(ダウン)させる工法。昇降装置を内蔵した昇降フレームを、解体するビルの外周柱へ取り付けて、広い作業スペースを確保できるのが特徴だ。屋根に透光性のシート材を使用し、開放時はもちろん、屋根を閉じた状態でもハット内部へ太陽光を採り入れられるよう工夫している。現在、西日本で進むプロジェクトに初適用し、2月ごろ躯体の解体に着手する。
「移動式解体工場」 ビルの最上部へ設置
ハットは昇降フレームの外側を外部足場と防音パネルで覆う。天井には開閉式の屋根のほかに、移動式の天井クレーンを設置する。ハットの高さは約17b。下端には、落下防止用の装置が付く。また、ハットは平面形状がL字型や円形といった矩形以外の建物にも柔軟に応用できるという。
作業手順を見ると、まずスラブ・梁をカッターやワイヤーソーを用いてブロック単位に切断し、建物内を貫通する開口部を通し天井クレーンで吊り下ろす。続いて壁・柱を切断、搬出し、1フロアを解体したところでハットのジャッキダウンを開始する。昇降フレームは外枠と内枠が交互にスライドする仕組み。内枠を固定した状態で外枠を下降し固定した後、内枠を下降し固定すると1サイクル終了だ。
同工法は自然エネルギーを活用した省エネ技術にも取り組んでいる。南向きの防音パネルの一部に太陽光発電システムを設置。また天井クレーンにも発電機能を搭載しており、荷下ろし時の位置エネルギーを電気に変換し、クレーンの巻き上げやハット内の照明に利用する。更に、地上付近で作業する重機が小割をする際の振動を利用した振動発電システムも採用する。
また、鋼管コンクリート構造の柱の表面を自動的に切断する装置を開発、プロジェクトへ初適用する。柱の周囲にベルト状に取り付けた装置のカッター部分が自動的に一周して、表面の鋼管を切断する。現場で火を使う必要がないのは、安全面から見て大きな収穫だ。
超高層ビルの解体に必要な条件は、高い安全性と周辺環境への配慮。加えて、工期・コストの圧縮も求められる。ハット内での作業は、雨天などの天候の変化にも作業を中断することなく連日の作業が可能となり、粉じんや騒音の拡散も防止できる。同時に、太陽光が柔らかく差し込み、昇降フレームを既存建物の外側に置く、すっきりとした構造は、作業関係者にも好評を得ている。
ほかにも、同社は塔体を下から解体する「竹中グリップダウン工法」を有している。2009年には当時、電波塔として利用されていた大阪タワーの解体に適用した。