知りたい 防衛施設の強靭化(1)総額4兆円の防衛力整備計画 地域建設業の協力不可欠

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海上自衛隊の艦船の係留などに使われる港湾施設(写真提供/防衛省)

 「防衛力整備計画」の閣議決定から12月16日で3年がたった。防衛施設の強靱化に5年間で約4兆円を充てるこの計画は、折り返し地点に差し掛かり、各地の駐屯地や基地で、強靱化事業が本格的に動き始めている。これまでにない多くの事業を抱えることになった防衛省は、強靱化事業の円滑で着実な執行に地域の建設業の協力が不可欠とし、入札・契約制度の見直しに取り組んでいる。  防衛施設の強靱化事業で、すでに執行された予算に2026年度概算要求額を加えると、強靱化事業の予算は合計3兆0772億円となり、計画目標の総額約4兆円の8割に上っている。防衛省は、26年度当初予算の概算要求で、25年度予算比53・0%増の1兆0636億円の大幅な予算増額を要求した。26年度は、これまでの計画・設計段階から、本格的な施工の段階へと移行する。  すでに発注件数も増加している。24年度の発注件数は、計画初年度の22年度と比べ、工事で14・4%、建設コンサルタント業務で24・6%増えた。政府全体の公共事業費が横ばいで推移し、労務費・資材価格の上昇によって発注件数が減少していることを考えると、この発注件数の増加は異例だ。  防衛省の整備計画局施設計画課も、26年度が「25年度までに完了させる調査・設計を踏まえ、工事が本格化する年」(防衛省整備計画局施設計画課)と考えている。隊舎や庁舎の建て替え、空調設備更新などに5365億円を充てる他、部隊新編や新規装備品導入に向けた施設整備にも4107億円を投じる。工事の発注件数は26年度にさらに増加する見通しだ。  ただ、予算と発注件数の急激な増加は、応札者と金額が折り合わない「不調」や応札者が不在の「不成立」の増加を招いている。24年度に発生した不調・不成立は工事で302件となり、22年度の2・7倍に増加した。不調・不成立となった工事も、発注条件を変更して再公告し、契約に至っているとしているが、大量の事業を計画期間内に終える上で、落札者決定プロセスに時間のロスが生じている。  不調・不成立を減らすためには、これまで防衛省の受注実績がない建設企業の参加が必要だ。防衛省は、一部の秘密保持を求められる施設を除けば、「他省庁の入札・契約制度と大きく異なるわけではない」(整備計画局建設制度官)としているが、受注実績のない企業にとっては、強靱化事業が〝特殊な仕事〟と映るのかもしれない。防衛省は、総合評価落札方式において新規参入を促すため「競争参加向上型」によって受注実績の少ない企業が入札参加しやすくなるよう民間での実績などを評価している他、適正な予定価格を設定するために「見積活用方式」も導入している。24年5月に発足した防衛施設強靱化推進協会(PDFR、乘京正弘会長)との意見交換会も開き、受注者側の意見を制度設計に反映させている。  一方、地域の建設業にとっての強靱化事業は、大型工事に参画できる絶好の機会だ。防衛省は、大手ゼネコンがスポンサーとなるJVに地元企業が参画できる制度も運用している。防衛力整備計画の決定後に整えられてきた入札・契約制度を知ることは、建設企業にとっても受注確保の第一歩になるはずだ。 ◆  ◆  ◆    5年間で4兆円を執行する防衛施設の強靱化事業がいよいよ最盛期を迎えます。防衛省は計画期間内に大量の事業を終えるために、地域の建設業の参画を求めています。この連載では、強靱化事業の全体像、強靱化事業をきっかけに見直された防衛省の入札・契約制度、発注体制の強化などについて解説します(毎週木曜日配信)。