01年以前の杭基礎建築物 能登半島地震受け対策検討
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能登半島地震による建築物被害の原因分析を行う国土交通省の有識者委員会は、基礎杭に関する耐震設計が義務付けられた2001年以前の建築物を対象に、安全性の確保対策を検討する。基礎杭の損傷による建築物の転倒という国内初の被災事例を踏まえた対応で、条件が類似するなど同様に転倒の恐れがある建築物を今後、精査する。
能登半島地震では、1975年に竣工した鉄筋コンクリート造7階建てのビルが転倒した=写真。委員会は、杭の変形性能が小さく、杭頭が地震動により破壊されたと推定。柱の配置の偏りなどで一部の杭に負担が集中してビルが傾き、地盤が軟弱だったことで転倒に至ったと分析した。
委員会は、2001年以前に設計された建築物で、傾きやすさや地盤の弱さといった条件が重なる建築物について、安全確保対策を実施するよう求めた。対象の範囲、対策の内容は今後検討する。
木造建築物の被害状況についても分析をまとめた。現行の耐震基準建築物でも、接合部の仕様を明確化した00年以前の建築物では34・6%に被害が何らかの損傷が見られた一方、00年以降に施工した場合は倒壊・大破が見られず、大部分の建築物で被害がなかった。
今後は住宅性能表示制度や長期優良住宅認定制度の活用を通じ、より性能の高い住宅整備を促す。
地震で倒壊しなかったが、天井の落下や配管の損傷によって使用できなくなった建築物も多かった。委員会は、非構造部材やライフラインの損傷を低減するための設計方法などを示す「機能継続ガイドライン」を充実させるよう提案した。
委員会の検討結果は12月中にまとめ、公表する。
