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建滴 地域維持型契約方式の導入

2011/9/5 東京版 掲載記事より

「地域維持型の契約方式」の導入に向けた動きが進んでいる。国土交通省は中央建設業審議会を開き、同方式の具体的な検討に着手。政府は、同方式の導入を盛り込んだ新たな入札契約適正化指針を閣議決定するとともに、国交・総務・財務の3省が、地方公共団体を含む各発注者に取り組みを要請した。同方式の導入は、地域に根付いて活動している建設業者にとって朗報だ。しかしその導入は、市町村などの地域が判断する。地場業者はこれまで以上に、自らが地域に果たす役割をアピールしていくべきだ。
 地域維持型の契約方式の導入は、国交省の建設産業戦略会議が6月にまとめた提言で掲げた。災害対応や除雪、インフラの維持管理など、地域に不可欠な業務について、複数の工種・工区をまとめたり、複数年の契約単位で発注する方式の導入を提示。また、これらの事業の受注・実施を目的とした「地域維持型JV」の結成を盛り込んだ。いずれも、厳しい経営環境にある地場業者の維持管理業務の受注を後押しするための措置だ。
 地場業者の多くは、建設投資の減少に伴う受注競争の激化で体力が低下し、地域の維持管理を適切に実施できる労働者や建設機械の確保が難しい状況にある。そんな中にありながら、豪雨・豪雪時はもちろん、新燃岳の噴火や鳥インフルエンザ、口蹄疫、そして東日本大震災に際して昼夜を問わず対応した。
 社会は、地域に根付き、地域に精通した地場事業が、地域の維持に大きな役割を果たしていたことを改めて思い知った。このことが、地域維持型契約方式の提言につながったことは間違いない。
 地場業者は、現在の機運を生かし、自らの役割をより知ってもらうべきだ。その具体的なヒントが、全国建設業協会主催の「建設業社会貢献活動推進月間中央行事」の表彰事例にある。
 今年度の中央行事で事例発表した宮坂建設工業(北海道帯広市)は、2003年の十勝沖地震を契機に、地域の住民や学校に参加を呼び掛けた防災訓練を毎年実施している。河川・建物のパトロールのほか、土のう積みや消火訓練、応急措置の実演、土のう作成体験などを、地元の警察署や消防署の協力を得て行っている。昨年の訓練には1200人もの人が参加したという。
 防災訓練を実施している企業・団体は珍しくない。しかし、同社のように地域の関係者を幅広く巻き込んで主体的に取り組んでいる組織は少ないはずだ。防災に対する関心が高いこの時期に、建設業の機動力と労働力、技術、ノウハウを地域住民が目の当たりにするインパクトは大きい。頼れる存在が身近にあることを知った住民は、その存在が地域を見守り続けてくれることを願うはずだ。
 防災訓練に限らず、ビオトープづくりや植樹、清掃など、地域と一緒に取り組めることは多い。住民が地場業者を身近に感じることで、理解が進めば、地域維持型契約方式の導入も円滑に進むに違いない。