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建滴 業種区分の見直し 「消費者目線での議論を」

2011/10/31 大阪版 掲載記事より

建設業許可制度に基づく業種区分の見直しに向けた検討が、いよいよ本格化してきた。国土交通省が24日、中央建設業審議会・社会資本整備審議の基本問題小委員会に業種区分に関する調査結果を示し、今後の在り方について意見を求めたのだ。建設業団体などからは業種新設の要望が数多く寄せられているが、すべてに対応することは現実的ではない。今後の絞り込みが大きな課題となる。
 建設業許可制度は、建設工事の適正な施工を担保するため、許可を受けた業種に限り工事の請負を認める仕組み。現行の28業種となったのは登録制から許可制に移行した1971年のことだ。その後、さまざまな局面で議論はされたものの、結果として40年間にわたり見直されることはなかった。
 ここにきて国交省が検討に乗り出したのは、社会情勢の変化を強く意識したためだ。同省の「技術者制度検討会」が本年6月にまとめた報告書では「ストックの増加、環境重視など建設業を取り巻く社会情勢が変化しているとともに、建設工事の内容の変化、専門技術の進展が著しい」との認識を踏まえ、「現在の業種区分が実態と乖離(かいり)していないか、多様な視点による点検が必要」と指摘した。
 建設産業戦略会議の「建設産業の再生と発展のための方策2011」でも、「社会的ニーズの動向を考慮しつつ、エンドユーザーである発注者の保護に役立つような観点から検討を進める」との方向性が示された。
 このため国交省は本年9月、業種区分の実態と建設業界の要望を把握するための調査を実施。その結果、▽施工の安全性や廃棄物の適正処理の確保▽不良不適格業者の排除▽業種に対する社会的認知度の向上▽若手技能者の入職促進―などを理由として、実に27業種の新設要望が寄せられた。
 注意すべきなのは、業種を新設すれば問題が解決するものではないということだ。不良不適格業者やダンピング受注は業種の有無にかかわらず存在する。業種の細分化で、建設業や行政の負担が増えたり、重層下請け構造が深刻化したりする懸念もある。
 他方、建設業の情報が乏しい民間発注者などにとって、業種区分は依頼先の専門性を判断する上で大きな意味を持つ。基本問題小委員会でも「顧客・エンドユーザーが求める業種が用意されているかどうかが重要」との指摘が出た。
 こうした点を考え合わせれば、業種区分の点検で最も重視すべきなのは、業界の都合ではなく、消費者の目線に立つことだ。国交省は12月にも点検結果を踏まえた対応策を固める考え。その際には、分かりやすく客観的な基準を設け、業界と社会がともに納得できる結論を導いてほしい。さらには今回の議論を通じ、建設産業全体が業種の意味や役割を見つめ直す契機としたい。