建通新聞社

建設新聞読むなら建通新聞。[建設専門紙]

建滴 土地信託の活用へ 税制改正と通知の効力緩和を

2011/11/7 神奈川版 掲載記事より

東日本大震災の発生からおよそ8カ月になる。復興に当たっては、被災地である地方自治体が主役を務め、地域住民の声を吸い上げて街づくりを進めるべきだ。ただ、震災に加えて地方経済の衰退、住民の高齢化などの影が忍び寄る。交付金が支給されるとはいえ、公的資金だけで復興を成し遂げるのは難しいと考える。やはり民間の資金やノウハウを活用した官民連携が重要だ。
 政府も7月29日に決定した復興基本方針の中で、民間が復興の担い手となり、その力を最大限に発揮できるよう支援するとしている。
 復興基本方針に盛り込まれた官民連携策の一つが土地信託だ。
 公有地の土地信託は、民間活力を導入した手法として1986年に国有財産法、地方自治法を改正して以来、住宅供給や施設整備で活用されてきた。
 借入期間の長期化、賃料下落といった金融・経済環境の変化に伴うリスクは存在するが、自前の資金で施設を整備する場合と比較すると、地方自治体の負担はコスト的にも作業量的にも軽くなるのは間違いない。
 信託銀行などで構成する信託協会は、復興を支援する施策の一つとして土地信託を活用するよう関係省庁へ提案している。
 しかし、実現に向け課題があるのも事実だ。
 土地信託では所有権が地方自治体から信託銀行に移転するため、地方自治体が自ら施設を整備した場合に非課税となる登録免許税や固定資産税、不動産取得税などが発生する。2012年度の税制改正要望では、信託協会が関係省庁へ非課税化を要望しているところだ。
 もう一つ土地信託の課題を挙げるとすれば、自治事務次官通知の効力緩和だろう。通知は86年5月のもので「公共施設の建設を主目的とした信託は行わないものとする」とされている。学校や公営住宅、体育館など被災地の復興に公用・公共施設が果たす役割は大きい。一刻も早く改善されるべき案件と考える。
 土地信託には、ほかにも土地と併せて金銭を信託する包括信託が認められていないといった問題が残るものの、まずは税制改正と次官通知の緩和が被災地に土地信託を導入する「一丁目一番地」であろう。
 復興基本方針では、当初5年間を「集中復興期間」と位置付けている。政府はスピード感を持って地域再生に向けた歩みを進めていかねばならない。12月中旬ごろには12年度税制大綱がまとまる見通しだ。土地信託を地方自治体が使いやすい制度に作りかえることが求められる。