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建滴 震災復興工事 新たな公共調達制度も視野に

2011/11/21 中部版 掲載記事より

東日本大震災の復旧・復興工事を進める上で被災地では、建設業の技術者・技能者不足とこれに伴う労務費の上昇や、資材価格のアップが問題になり始めている。ある地元建設業者は技能者不足について「東北地区内だけでなく、北海道や関東からも人が集まらなくなっている」と嘆き、第3次補正予算による事業の本格化によって「今後1〜2カ月で問題はますます深刻化する」とみる。
 今回のような広域的な大災害の復旧・復興事業では、公共調達の在り方についても、従来の枠組みを超えた新たな制度整備を考えていく必要があるのではないか。
 風水害を含め、大災害が集中する時代が日本には過去に何度もあった。江戸時代の慶長年間や元禄年間、幕末期の安政年間がそうだった。現代の日本がそんな災害集中期に入っているのではないかという見方がある。首都直下地震や東海・東南海・南海地震の近い将来の発生も懸念されている。東日本大震災のスムーズな災害復旧・復興は、今後の災害に対応するモデルとしても重要な意味を持つ。
 ここ10年以上にわたって公共事業の削減を中心に日本の建設投資が減少する過程で、供給過剰構造にあるといわれながらも、建設会社の数や建設業の就業者数は減り続けてきた。また、技能者の高齢化と、若年就業者の減少によって、技能労働者不足の問題はすでに顕在化していた。そういった状況の中で発生したのが今回の東日本大震災だ。被災地での技術者・技能者不足の背景にはそんな実情もある。
 復旧・復興事業は、震災によって仕事を失った被災者の雇用の受け皿としても期待されている。しかし、地元の建設業は簡単には雇用を増やせない。受注は当面、確実に増加するのだが、今後3〜5年で復興事業が進捗すれば、その後は仕事が減少する。新たな雇用は将来、経営の負担になり、失業者を再び増加させることにもなりかねない。資機材のリース業者らも、目先の需要増に合わせた設備投資には慎重だ。
 一方、東日本大震災の復旧・復興事業への公共事業予算の集中的な投入によって、被災地以外の地域では公共事業が一層減少し、地元建設業の経営の疲弊がますます進む懸念がある。災害時の緊急復旧に出動する建設業が地元にいない「災害対応空白地帯」が一層拡大しかねない。そういった地域を新たな大災害が襲う可能性を現実の問題として直視しなければならない。
 公共事業の発注は、地域経済振興の観点からも地元企業優先が原則だ。この原則は将来も変わらない。しかし、広域的な大災害への対応では、今後発生する災害への備えとしても、全国の建設業の力を結集・育成する広域的な地域建設業のJV制度の導入など、これまでにない制度整備を検討していくべきだ。