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建滴 自立・分散型エネルギー社会の構築急げ

2012/1/31 大阪版 掲載記事より

3・11東京電力福島第一原子力発電所の事故を境に、日本のエネルギー政策は大きな転換期を迎えている。
 災害時でも確固としたエネルギーの安定供給体制を構築するため、これまでの大規模集中型から小規模で自立・分散型のエネルギー源を確保する方向に、かじを切り替えた。
 高度な防災都市を目指す東京都は、「2020年の東京」計画(11〜20年)に、日本全体をリードする道筋を提示。この中で「低炭素で高効率な自立・分散型エネルギー社会を創出する」とした目標を掲げ、「東京産電力300万`h創出」「スマートシティ」の各プロジェクトを位置付けた。
 都は再生可能エネルギーの普及とともに、100万`h級の高効率なコンバインド方式の天然ガス発電所の設置を強力に進める。老朽化した火力発電所をリプレースするために、民間参入を促す官民連携のインフラファンドの創設も急ぐ。
 また、再開発事業と連動した50万`hのコージェネレーションシステムの導入など、IT技術を活用してエネルギーを制御しつつ、自立・分散型発電を拡充し、都内の発電能力を倍増させる考えだ。
 しかし、これらを推進する上で、電力制度改革を含む、抜本的な対策が必要になる。電力事業への多様な民間事業者の参入促進や、「発送電分離」の具体化に加え、天然ガスを安価で安定的に確保するための国家戦略が強く求められる。
 昨年、大阪市の橋下徹市長は、東京都の石原慎太郎知事らと会談。東京電力や関西電力に対し、株主提案権を行使してでも「発送電分離」を具体化させていく強い意思を示した。経済産業省でも、送電部門を電力会社から分離させる具体的な検討が緒に就いたばかりだ。
 ことしに入り、政府と東京電力は、火力発電部門の分離、売却を軸に経営形態を見直すとした一部報道が流れるなど、電力制度改革に向けた動きから目が離せない。
 一方、天然ガスの利用拡大では、これまで民間事業者の個別の取り組み任せとなっていた、国外からの確保について国としての関与を強化。経済産業省で供給基盤の整備に関する検討に入った。
 天然ガスインフラは、LNG(液化天然ガス)基地などの整備が進む一方、主要都市間や基地間をつなぐ幹線輸送のパイプラインの整備は遅れているのが現状。幹線パイプラインに加え、枯渇の天然ガス田を活用した、大型の地下貯蔵施設の整備は喫緊の課題だ。
 天然ガス発電やスマートシティを見据えたコージェネレーションシステムなどが相互に補完し合った時、エネルギーの地産地消は実現する。東京発の自立・分散型のエネルギー社会の構築を急がねばならない。