建通新聞社

建設新聞読むなら建通新聞。[建設専門紙]

建滴 環境不動産 業界挙げて環境性能アップを

2012/2/20 東京版 掲載記事より

地球環境に配慮した不動産、いわゆる「環境不動産」に対する関心が高まっている。東日本大震災に伴い顕在化したエネルギー需給問題を機に、テナントが築年数の古いビルから省エネ性能の高い新築ビルへと移る動きが活発になった。
 環境対策でビルの差別化を図ることはテナントに対する訴求力を磨くことにつながる。その取り組みの一つに環境認証制度がある。
 金融機関や公益団体では、環境性能の高い不動産を対象に認証制度を設けている。認証を受けることが、不動産を供給する事業主が開発資金を低利で調達したり、環境配慮に意欲的なテナントを誘致する上での呼び水になるからだ。
 例えば日本政策投資銀行の「DBJ Green Building認証」は▽省エネ・再生エネの利用▽テナントの快適性▽リスクマネジメント▽周辺環境への配慮▽オーナーとテナントの協働―という五つの視点に基づき、ビルの環境性能を4段階で総合的に評価するものだ。
 2011年4月のスタートから12年2月20日までに認証した38件のうち、最高ランクの「プラチナ」を獲得したのは9件。制度を設計した部署には、企業の財務担当以外に技術畑からの問い合わせも多く寄せられ、環境不動産に対する関心の高さを肌で感じているという。
 また、建築物そのものの環境性能ではないが、周囲の生物多様性に配慮する取り組みを評価する日本生態系協会のJHEP(ジェイヘップ)がある。
 JHEPは、土地を取得する(借りる)年を基準に向こう50年間にわたる自然環境保全への貢献度を定量評価する制度だ。
 これまでに森ビルが虎ノ門・六本木地区再開発で、ヒューリックが集合住宅や福祉施設でそれぞれ認証を受けている。一つ一つの事業は数千〜数万平方bの取り組みにすぎないが、認証件数を伸ばすことで都心に緑地が増えていく。事業主に対するインセンティブとして、協会は金融機関と連携し、資金調達面で事業主が金利優遇を受けられるような措置を検討している。
 一方、国土交通省では有識者を定期的に集めて環境不動産に関する懇談会を開いており、3月中をめどに報告をまとめる予定だ。ともすれば、何をもって「環境不動産」とするかといった議論に陥りがちだが、不動産は個別性の強い資産であることを踏まえ、個々の不動産でエネルギー使用・排出量削減や生物多様性などの取り組みが進むような実効性ある提言を期待する。
 日本は本格的な人口減少社会に突入した。不動産投資は縮小に向かう可能性があるだけに、国内外の投資家の関心を引き付ける努力が求められる。業界を挙げて不動産の環境性能を高める意識を持ち、行動することが必要だ。