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建滴 総合評価を抜本見直し 改善策となるか

2012/3/5 東京版 掲載記事より

国土交通省は、直轄工事の総合評価方式を抜本的に見直すための考え方をまとめた。これまで運用してきた簡易型、標準型、高度技術提案型の3タイプを改め、簡易に技術力を評価する「施工能力評価型」と、技術提案を重視する「技術提案評価型」の2タイプに再編。品質確保の観点で評価項目を絞り込んでいくという。2012年度上半期に試行をスタートし、13年度からの本格運用を目指している。
 公共工事品質確保促進法に基づき、直轄工事で総合評価の適用がほぼ100%に達する一方、技術提案の作成・審査にかかる競争参加者と発注者の負担が増え、品質確保や民間の技術力活用を図る仕組み本来の理念から乖離(かいり)した状態を改善するのが狙いだ。
 新しいタイプを個々に見ると、施工能力評価型は、現行の簡易型や比較的難易度が低い標準型(主に標準U型)を集約する格好。A4用紙1〜2枚に施工計画の記述を求め、点数化せずに可または不可で評価する「T型」と、企業や技術者の実績のみを評価する「U型」を設ける。件数ベースで97%がこのタイプに含まれるそうだ。T型でヒアリングを行う場合は「段階選抜」を採用して競争参加者をふるいに掛ける。
 技術提案評価型には、現行の標準T型の一部と高度技術提案型を取り込む。難易度に応じ、技術提案に基づき予定価格を作成する「AT型」「AU型」「AV型」と、標準案で予定価格を定める「S型」を使い分ける。基本的に段階選抜を採用し、AT〜AV型は最も優れた提案の加算点を、ほかの提案よりも20点程度高くする。
 これらからは、評価の方法や項目がシンプルになり、段階選抜で負担が軽減される―といったメリットが読み取れる。
 ただ、懸念材料もある。最たるものは価格競争の助長ではないか。
 とりわけ施工能力評価型は、T型で施工計画の評価を2択にするため、可の中で技術力の差が付かず、U型も実績がなければ評価がダウンする。相手に競り勝つため、あるいは実績を維持するために、競争参加者が考える選択肢はおのずと限られる。
 段階選抜についても、1次審査をクリアした競争参加者たちは、落札の角度を高める最後の一手に何を思い浮かべるのだろうか。
 調査基準価格ギリギリの応札や無理な受注が横行し、品質低下を招いたのでは元も子もない。
 実績のみの評価や段階選抜に伴う競争参加者の固定化も懸念される。この点については業界団体だけでなく、発注を担当する地方整備局からも、評価項目の追加などで固定化を生じさせない工夫を求める意見が出ている。
 抜本見直しの考え方をベースに、これから地方整備局単位で12年度の総合評価運用ガイドラインの策定作業が進む。大規模災害への対応も見据えながら、国交省は社会資本整備の担い手を今後どのように選ぶのか。
 競争参加資格審査や工事ごとの資格要件との役割分担も課題に挙げているだけに、総合評価にとどまらない入札契約制度のさらなる改善が必要だ。