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建滴 災害廃棄物処理 不可欠な「安全」担保の仕組み

2012/3/26 東京版 掲載記事より

東日本大震災の被災地の復旧・復興を1日も早く軌道に乗せるためには、作業従事者や地域住民らの「安全」を担保しつつ、災害廃棄物の広域処理と、再生利用を推進しなければならない。国は、国民が抱いている放射性物質汚染への懸念に丁寧に応え、震災廃棄物に混在しているアスベストや化学物質などの有害物質へのばく露防止を、さらに徹底する必要がある。
 大震災によって発生した災害廃棄物の量は、岩手・宮城・福島の被災3県だけで約2270万dと推計されている。これは3県が1年間に排出する一般廃棄物の約11年分に相当するという膨大な量だ。
 被災地の自治体はもともとマンパワーが不足している上に、行政機能が著しく低下している。災害廃棄物の撤去・処理は、国が先頭に立って進めるしかない。そのためには被災地以外の地方自治体の広域処理への協力が不可欠だし、災害廃棄物の再生利用を拡大する必要もある。
 災害廃棄物の処理の進捗がはかばかしくない状況に、ようやく重い腰を上げた政府は「災害廃棄物の処理の推進に関する関係閣僚会合」を3月13日に初めて開き、政府を挙げて広域処理と再生利用の推進などを強化することを申し合わせた。野田首相はこの初会合で、広域処理の受け入れを都道府県などに文書で正式に要請することや、受け入れ基準の設定、災害廃棄物の再生利用の推進などを関係閣僚に指示。この日を境にして、広域処理の受け入れを表明する自治体が目立って増えてきている。
 これまでの環境省らの地道な働き掛けが効を奏したともいえるが、国が「放射性物質汚染対処特別措置法(特措法)」を12年1月から全面施行したことが大きいようだ。
 特措法は(福島原発)事故由来放射性物質による汚染状態が1`c当たり8000ベクレルを超える廃棄物を「指定廃棄物」に指定し、国の責任において指定廃棄物が排出された都道府県内で処理することを明記した。広域処理は「国が責任を持って安全性を担保」することを確約した訳だ。
 しかし、災害廃棄物の処理を促進する上で、もう一つの柱である再生利用については、どこを探しても「安全」の二文字は見当たらない。
 その象徴がアスベストだ。例えば「東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法」には、アスベストによる健康被害の防止を国の講ずべき措置の一つとして盛り込んでいる。だが、作業従事者や住民らをアスベストばく露から守るためのセーフティネットはいまだに整備されてはいないのが実情だ。
 10年には、埼玉県などで再生コンクリート砕石からアスベストが見付かった。被災地で路盤材として使われている再生砕石からもアスベストが見付かっている。災害廃棄物の再生利用は推進しなければならないが、環境と健康リスクを回避・低減するためのスクリーニングとその仕組みづくりもまた急がなければならない。