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東日本大震災と建設業の在り方

2014/3/10 

死者行方不明者合わせて1万9009人(2012年3月10日現在、警察庁まとめ)―。東北地方を中心に甚大な被害をもたらした東日本大震災の発災からあしたで3年が経つ。復興は進んでいるとはいえ、いまだに避難者数は27万人に上り、復興住宅の着工率は61%にとどまっている。この未曽有の大災害から何を学ばなければいけないのか。建設産業の役割、建設業の在るべき姿を謙虚に問い直し、今後30年間での発生率が70%以上ともいわれている首都直下地震や南海トラフ巨大地震に備える必要がある。
 東日本大震災は、われわれに脆弱(ぜいじゃく)な国土、老朽化した社会基盤、そして瀕死の建設業という現実を突き付けた。どれも今そこにある危機≠セと知っていたにもかかわらず、有効な手立てを打たないまま放置してきた問題ばかりだ。そして一昨年の12月の政権交代、中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故を契機に、これらの難題が一気に噴出、顕在化している。
 東日本大震災が発生した直後は主要交通網が断絶し、代替交通網の貧弱さにいら立ちながら日本海側を経由して援助物資を被災地に届けたボランティアも少なくなかったはずだ。わが国のリダンダンシー(代替性)の粗末さが浮き彫りになった。昨年12月には「防災・減災等に資する国土強靭化基本法」が成立した。国は「国土強靭化基本計画」を、地方自治体は「国土強靭化地域計画」を策定し、長期的・継続的に社会インフラを維持管理することを法に明記した。やっと荒廃するアメリカ≠フ二の舞を回避する方向にベクトルが向いた。ただ建設業は担い手不足が顕在化し、認識していたはずの自らの衰弱をより一層自覚することになった。
 国土交通省は6日、2050年を見据えた中長期の国土ビジョン「新たな国土のグランドデザイン」の骨子案を発表した。人口減少と高齢化が急速に進むことを前提に、「多様性」「集積」「連携」を新しい国土の姿を表すキーワードに挙げた。災害に強い国土づくりとコンパクト化を一体的に進め、既存インフラの維持管理や更新、交通網のネットワーク化などを着実に進める施策も盛り込んだ。こうした将来の国土の姿を実現する、その担い手となるのは建設業だ。
 建設業は東日本大震災という鏡を通して自らのありのままの姿を見ることになった。その鏡に映ったのは疲弊し切った姿だった。しかし、建設業には国土を守る使命がある。その誇りを忘れず、社会に貢献し続ける姿こそ、建設業が魅力ある、若者から選ばれる産業になる唯一の道ではないか。そう信じ、建設業を再生させていくことがこの国の未来を築き、次世代に安心・安全な国土を継承することにもなるだろう。