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地整が「地域防災担い手確保型」

2014/4/21 

国土交通省が「二極化」させた総合評価方式を直轄工事で本格運用して1年余りがたった。受発注者の負担増や評価項目の複雑化といったこれまでの課題を踏まえ、施工能力の評価を大幅に簡素化したタイプと、技術提案の評価で品質向上を重視したタイプに再編。原則として品質の確保・向上の観点に評価項目を特化させていた。
 直近の集計(2013年4月〜12月)によると適用率は6割に上り、とりわけ負担軽減の面では一定の効果が現れているようだ。
 とは言え、本来、評価が必要な着眼点への配慮が不足している気がしてならない。最たるものは「地域貢献」への評価。こと災害協定を結んでいるかどうかや、緊急復旧などに従事した実績は、今後の国土強靭(きょうじん)化を考える上で欠かせない要素だろう。
 国土交通省の関東地方整備局では2014年度に「地域防災担い手確保型」総合評価の試行を始める。災害時に迅速に活動し、地域の安全・安心を担う建設業の、防災に関わる取り組み態勢や活動実績を評価しようとする試みだ。
 具体的には▽本店所在▽関東地整による基礎的事業継続力の認定▽災害協定▽災害活動実績―の有無を評価。最大で30点を加点し、特に災害活動実績に最大15点を割り振る。競争性の確保を前提に、災害協定と災害活動実績の有無を「資格要件」にすることも視野に入れている。
 対象は出先事務所で契約する3億円未満の施工能力を評価する工事。堤防や道路を新たに造るような案件への適用を考えているという。
 背景には二極化への反省もある。関東地整は従来タイプからの移行に際して、それまで「必須」だった災害協定や災害活動実績に関する評価項目を「選択」に変更。災害対応に前向きな地域の建設業を評価する重み付けを軽くしてしまった。東日本大震災後の措置だっただけに、災害協定を結ぶ管内の建設業協会からは改善を求める声が上がっていた。
 今回の試行に対しては、学識者も「やる気のある企業に門戸を広げるのは良い」との意見を寄せている。地域の建設業にしてみれば、防災やメンテナンスへの関わりが評価され、それが新たな受注機会につながるのであれば、より経営の見通しを立てやすくなる。
 発注者にとっても、防災や適切な維持管理を着実に進められるだろうし、頭を悩ます不調・不落を副次的に抑制できるかもしれない。
 折しも今通常国会では「公共工事品質確保促進法」の改正案が審議中だ。成立すれば、基本理念に建設産業の中長期的な育成・確保への配慮が加わり、発注者には事業特性や地域の実情を踏まえた入札契約方式の選択が求められる。
 地域の建設業は、災害が起これば真っ先に現場へ駆け付ける存在。その気概や意欲をくみ取る仕組みを整えてこそ、品質も安全・安心も担保されるのではないだろうか。