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建設業の未来と女性の活躍

2014/9/29 

やっと建設業で活躍する女性たちに光が当たり始めた。国交省と関係5団体は、8月22日に「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」を策定し、官民を挙げた取り組みをスタートさせた。そして日本建設業連合会は同月、女性だけで構成される「なでしこ工事チーム」の登録募集を開始。すでに第1号となる「チームなでしこ外環田尻」が登録された。従来と比べ、女性技術者や技能者がメディアに取り上げられるケースも格段に増えた。女性ならではのきめ細やかな感性や雰囲気が現場の姿形や運営を変えていくことになるだろう。
 女性が安心して現場や職場で働き、仕事と子育てを両立するためには、自治体など行政による子育て支援は欠かせない。職場でのさまざまなサポート、社内の制度や労務規程の変更も必要だが、女性の継続的な就労を実現しようとした場合、子育て支援サービスの充実は待ったなしだ。
 保育所に入りたくても入れられない「待機児童」の数はそれほど減っていない。厚生労働省によると、4月1日時点での全国の待機児童数は約2万1千人にのぼる。2010年のピーク時と比べ約5千人減ったが、まだ高水準だ。保育士についても政府は17年度末に約7万4千人が不足すると推測している。
 女性の技術者や技能者の活躍の場は大手企業だけでなく、地域の建設企業に広がらなくては裾野の拡大につながらない。地域や地場産業の活性化は地方創生の大きな下支えとなるに違いない。地域の建設企業が元気であれば、女性技術者や技能者の地元就労を促すだけでなく、UターンやIターン組の取り込みも見込める。
 一般的に、育児や介護支援などワーク・ライフバランスの大切さに理解のある企業ほど業績が良い傾向にあることは知られている。技術研修や資格取得などキャリア形成の仕組みを整えることも重要なインセンティブとなる。女性特有の着眼や発想を企業経営や現場運営に取り入れることができれば、企業業績だけでなく、新しい価値やシステムの創造も期待できる。
 政府の男女共同参画推進本部は8月、「女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針」を定めた。「2020年30%」とした目標の実現に向け、実現可能な施策を多面的に講じていく方針を示している。この方針に呼応するように埼玉県は、女性の活躍を支える施策を担う「ウーマノミクス課」を設置した。女性が働きやすい職場づくりに取り組む企業を認定し優遇策を講じている。実に認定企業は1千社を超え、増え続けているようだ。
 また東京都は、今月24日の都議会定例会で、女性を活用する企業への優遇措置として、優先的な指名や総合評価方式での加点などの優遇策を検討することを明らかにした。国はこのような自治体の取り組みを評価するとともに、良質な子育て環境の基盤整備≠急ぎたい。