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歓迎したい経験生かす仕組みづくり

2017/1/30 

一昨年の鬼怒川水害、昨年の熊本地震など、日本列島は毎年のように大規模災害に見舞われている。発災後、迅速にインフラを復旧させることは、建設業界が果たすべき重要な役割の一つだが、これまでは、行政側の復旧工事の発注について対応にはばらつきがみられた。しかし、ここにきて、非常時に適用すべき適切な発注方式の在り方など、これまでの経験を踏まえた仕組みづくりが進められている。大規模災害が頻発しているいま、汎用(はんよう)性のある仕組みづくりは大歓迎だし、早急な体制整備を望みたいところだ。
 直轄の復旧工事の発注に際しては、これまでも随意契約や指名競争入札などが状況に応じて適用されており、東日本大震災においては、被災してから2カ月まで応急復旧に随意契約を適用。半年までの間の本復旧には指名競争を適用した。3年前の広島土砂災害などでも柔軟な措置が講じられている。
 しかし、短期間で多くの発注を行う発災後の場合、こうした対応は入札契約手続きの過程でミスが発生する恐れがある。また、指名競争入札の場合、辞退者や不参加者の発生、ダンピング受注の可能性なども懸念されている。現に広島土砂災害では、1件当たり平均で指名者数の半分以上が辞退・不参加を表明する事態が起きている。低入札発生率も6割弱に達し、施工体制確認のために時間を要するなど、復旧の大きな支障になったとの指摘もある。
 こうした課題を踏まえて国土交通省では、災害時など非常時における発注方式の適用について手引きを作成し、先頃、発注者が災害復旧工事に適用する入札契約方式の考え方を示した。
 それによると、災害発生から4カ月程度の期間に発注する応急復旧・本復旧は随意契約、発生後1〜12カ月の本復旧でも指名競争入札を採用できるとし、手続き期間短縮で迅速な復旧を可能にする。
 また、指名競争入札を採用する際には、低入札価格調査基準価格を下回る落札が難しくなる「施工体制確認型」の採用を推奨し、復旧工事でのダンピング受注を抑制するというのが基本的な方向だ。
 こうした手引きがあれば、自治体もためらうことなく、柔軟で迅速な入札方式の適用に踏み切ることができそうだ。ダンピング受注の横行を防ぐことにもなり、地域の守り手である建設業の健全経営にも資することになる。
 迅速対応といった点ではこの他、国交省と農林水産省が激甚災害(本激)の査定期間の大幅短縮を目指すことになった。被災調査の段階で査定作業の簡素化を周知するなど「事前ルール」を定めた上で、「机上査定」の限度額引き上げといった措置をとるものだ。
 この事前ルールを熊本地震で被災した実際の公共土木施設に当てはめたところ、全く簡素化を行わなかった場合に比べて43日短縮できることが分かっている。
 大規模災害が発生した後の復旧対応をあらかじめ定め、すべての自治体が共通の手続きを取ることは、迅速な復旧・復興に直結する。それはまた、社会の安寧(あんねい)と国民から見た建設業の再評価にもつながるはずだ。