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超高齢化社会の不動産業 時代に取り残されるな

2017/2/6 

ここ数年、東京23区外や郊外部で販売に苦戦する物件が出始め、「二極化」「供給過多」の傾向が強まったと言われている分譲マンション市場。ただ、長谷工総合研究所が首都圏における2017年の分譲マンションの新規供給戸数を、ほぼ前年度実績並みの3万6000戸台と予測するなど、複数のシンクタンクが17年もマンション開発の市況に「大きな陰りは見られない」との見通しを示している。
 確かに眼下の住宅取得環境は、住宅ローン金利の低下など需要者の購入マインドを押し上げる要因が少なからずある。新年賀詞交換会の中でも、不動産各社のトップからは「当面、大きな落ち込み要因が見当たらない」「用地選定の厳選化で高価格帯物件の開発に注力する」など、今後の分譲マンション市場を前向きに捉えたコメントが相次いだ。
 しかし、そう遠くない時期に多くのデベロッパーは住宅事業全般について、「ゼロベース」からの見直しを余儀なくされるだろう。なぜなら、あと数年で首都東京でもこれまでに経験したことのない人口減少社会、すなわち超高齢社会に突入するからだ。
 国立社会保障・人口問題研究所は、東京都の人口は五輪開催の20年で1335万人となりピークに達するものの、その後は減少を続け、50年には1175万人にまで落ち込むと予測している。人口動態が大きく転換する中で、住宅需要が減少することは避けられそうにない。
 超高齢社会の環境下で、勝機を見いだすための妙案は容易には見つからないが、コンサルタント業務やリフォーム・リノベーション、管理といった業務の充実に加え、高齢者の日々の暮らしをサポートするソフトサービス部門の強化が求められるだろう。
 25年には全ての「団塊世代」が75歳以上の後期高齢者となる。前後して、多くの「団塊ジュニア」が40歳代後半に差し掛かる。ローンを組んで住宅を購入する20歳後半〜30歳台の若年層よりも、中高年層の方が需要のボリュームが上回る時代が目前に迫っている。
 住宅・不動産業が活力を維持するための方策は、もう、従来の延長線上には存在しない。事業構造をこれまで以上に「ストック活用型」にシフトするべきだろう。
 一方で忘れてはならないのは、健康寿命の延伸など医療・介護分野の課題に対して、不動産業がどう関わっていくかだ。
 これまでに、住宅・不動産業界は住宅に関するさまざまなノウハウを蓄積してきたはずだ。にもかかわらず、若者よりはるかにボリュームが大きい高齢者の需要に対する取り組みは十分とは言えない。社会問題となっている孤独死をなくす意味でも、単身の高齢者が元気なうちから共助できる住宅や、年金で生計を立てる高齢者に対応するシェアハウスなどがもっと整備されていい。
 デベロッパー各社は今こそ、中長期的な需要予測に基づく事業計画を立てた上で、新たな商品やサービスを作り、育てるべきだ。その取り組みが変化する需要構造の中で、時代に取り残されない不動産業を確立する第一歩となる。