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マネジメントする仕組みが必要だ

2017/5/15 

人口減少・少子高齢化社会がもたらすひずみが、国有地の管理・活用の在り方にも大きな影響を及ぼし始めている。超高齢化社会が進行し、地方の定住人口が急速に減少しつつあるいま、特に懸念されるのは「売残財産」と「相続人の不存在によって国庫に帰属した不動産」の管理コストの増加だ。財務省は自治体との情報共有・連携を強化するとともに、行政と民間のニーズをマッチングさせることができ、売却・活用・管理を一体的に行うことのできるPPP(官民連携)の仕組みを構築するべきだ。
 財務省は国有地を売却する際、まず地方公共団体などに取得の意思の有無を確認し、その後に一般競争入札を行っている。建築制限などの条件、形状、瑕疵(かし)―などの問題を抱えた土地もあり、2015年度末現在の売残財産は1000件、約228億円(2015年度末現在)に達している。
 財務省は、最低売却価格公表入札制度を導入したり、地下埋設物が存在するなど瑕疵(かし)のある土地などについては、その状況を明示するなどの売却促進策を講じている。だが、社会の少子高齢化は今後も一層進行する。地方公共団体などの土地需要にも限りがあることを考えた場合、売却・活用・管理を一体的に行うPPPのスキームづくりは喫緊の課題だ。
 国有地の果たす役割や管理処分に対する考え方は、社会経済の環境変化に伴って変化している。用地の手当てが困難な都市部などでは、介護や保育など社会福祉施策の実現に必要な用地として活用されるなど、確かに国有地の有効活用は進んできている。
 しかし、その一方で、土地の保有・管理への負担感からか、相続登記を行わないままになっている、相続人不存在の土地が全国で増加しているという現実がある。
 特に高齢化が著しい地方では、中山間地域だけでなく、市街地でも適切に維持管理できない、あるいはしようとしない不動産が増加しているという。今後、財産的価値の乏しい不動産の相続を放棄する所有者がさらに増えることも考えられる。
 相続人不在の土地は空き家問題と同様に、廃棄物の不法投棄などの温床となりかねない。土地取引の支障にもなるだろうし、何よりも地域の衰退を加速させ、やがては国土を荒廃させてしまうことになりかねない。
 広島高裁は16年12月、山林の所有権放棄を権利乱用、公序良俗違反として無効とした判決を下した。「国がその土地の管理のために多額の経済的負担などを余儀なくされてしまう」というのがその理由だ。
 人口減少・少子高齢化社会は、誰も望まない国有地の増加、言い換えれば、財産価値の乏しい不動産ストックを形成してしまう危険性をはらんでいる。
 もちろん、ひと口に国有地と言っても、売却したり、活用したりできる財産ばかりではない。中には、無道路地や崖地など利用困難財産も存在する。
 防災・減災のためにも、誰かが適切に維持管理しなければならない。既存の包括業務委託などだけにとどまらず、「マネジメント」の発想を持ったスキームづくりを急ぎたい。