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建滴 高騰するマンション価格 本当の需要者は誰なのか

2017/5/29 

首都圏の分譲マンション価格の高騰に歯止めが掛からない。不動産経済研究所が発表した2017年4月期の1戸当たりの平均価格は5918万円で、前年同月比で168万円もアップしている。用地取得費や建築費などコストの高止まりが価格上昇の主な要因に挙げられるが、呼応するようにマンションの売れ行きも一時の勢いと比べて陰りが見えつつある。
 販売不振の状況は数字にも現れている。4月の新規発売戸数に占める契約率は66・3%(不動研調べ)。眼下は低金利が続き、住宅ローン減税などの政策支援が整っているにも関わらず、ここ数年の契約率は60%台の水準にとどまっている。即日完売する物件はほとんどなく、「東京都内のマンションなら必ず売れる」という神話は崩れつつある。
 全体的にマンション市場に浮揚感がないのはなぜか。その最大の理由は、需要者の取得能力(実質年収)と価格とがあまりにも乖離(かいり)しているからに他ならない。
 言うまでもなく、市場にとって最大の需要者は、国内外の投資家や一部の富裕層ではない。マイホームを取得しようとする、国民の大多数を占める一般世帯だ。しかしながら、これらの世帯がどんなに無理をしても、購入に踏み切ることが可能なマンションの価格はせいぜい「年収の6倍」までという。1000万円程度の年収がないと経済的に厳しい。実質賃金がなかなか上がらない状況の下では、多くの人々が購入を諦めざるを得ない。
 果たして、平均的な所得水準の世帯でさえ手が届きづらい今の市況を生み出した原因とは何なのだろうか。大手・中堅デベロッパーは、一般世帯のニーズや経済状況を的確に把握・分析し、物件を企画する姿勢が十分だったのだろうか。
 どうしても建築費のコストカットが難しいのであれば、「用地取得時などの過程で価格を抑える取り組みに限界までチャレンジできたのか」「遊休地・ストック活用の方策は出尽くしたのか」「最小の費用で最大の効果を得ることが出来るプロモーションはないのか」など、これまでの開発・販売手法を検証する必要がある。販売状況の停滞が著しいエリアでは価格調整・見直しが必要となるだろう。
 各社の顧客は、湾岸エリアのタワーマンションや都心部の高級マンションを購入できる富裕層だけではないはずだ。今後も価格の上昇が続けば、立地面で大きな優位性があるようなごく一部の物件を除き、一般世帯向けの物件は販売不振から脱することは難しいだろう。このままでは完成在庫が積み上がり、さらに市場が閉塞化してしまうことも懸念される。
 適正な販売価格帯については、議論の余地が残るだろう。ただ、せめて平均価格が「庶民でも頑張れば購入が可能」と感じられる水準にまで下がらなければ、市場を活性化させることは困難だ。
 妙案を導き出すことは容易ではないが、デベロッパー各社は広さ・仕様・立地のバランスを考慮した上で、一般需要者の取得能力と価格との乖離を縮小するための開発手法についてもっと知恵を絞り、そのモデルを構築するべきだ。