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改正品確法と建設関連業 受発注者が「命」を吹き込もう

2019/6/24 

今通常国会で成立した「公共工事の品質確保 の促進に関する法律の一部を改正する法律(改正公共工事品質確保促進法)」は、ともすれば、建設業の働き方改革に不可欠な「適切な工期」の確保を可能にする“効果”にのみ目が向きがちだ。だが、「建設コンサルタント業」「測量調査設計業」「地質調査業」―の公共工事における役割を積極的に肯定し、そのポジションを明確にした『画期的』な改正であるという、法の持つもう一つの側面にも着眼したい。
 これら三つの業は、調査・設計という建設生産工程の最上流部を担いながら「建設関連業」と呼ばれ、公共工事の実際を知らない第三者には、あたかも付随的な存在であるかのような印象を与えてしまいがちだった。
 そんな三つの「業」にとって、また、この後も続くわが国の公的固定資本形成(社会資本整備)に携わる人々にとって、今回の法改正が「あれ(公共工事品確法の改正)がマイルストーンだった」と言われる日が訪れるであろうことを、疑う余地はない。
 では、この改正法の何が「画期的」なのか。
 改正法は「公共工事に関する調査等(測量、地質調査その他の調査(点検及び診断を含む。)及び設計)の品質が公共工事の品質確保を図る上で重要な役割を果たす」との認識に立ち、公共工事に関する調査などについて、広くこの法律の対象として位置付けた。
 さらに、同法の理念の一つである「発注者の責務」の対象として、▽適正な利潤を確保するための予定価格の適正な設定▽ダンピング受注の防止▽適切な設計変更▽適正な工期設定▽施工時期の平準化▽災害時の緊急対応の推進や円滑な発注体制の構築等―を明記した。
 特筆すべきは、「公共工事の品質は、地盤の状況に関する情報等の工事に必要な情報が適確に把握され、必要な検証を経て共有された上で、より適切な技術又は工夫により、将来にわたり確保されなければならない」ことを基本理念に追加し、『地質リスク』の把握・評価を公共工事に不可欠なものとして明確に位置付けたことだ。
 改正法は、公共工事を取り巻く環境変化を中・長期的な展望と「人材育成・確保」の面から直視し、発注者に対して「発注者として『人材を育成・確保できる』体制整備に努める」義務を規定。その一方で、「国及び都道府県は、発注者を支援するため、契約により発注者の補助を行う者の能力の活用の促進等、必要な措置を講じる」などとして、発注プロセスにも民間の有する優れた技術力を積極的に活用できる道を開いた。この視点もまた、慧眼(けいがん)だろう。
 筆者は今回の法改正を画期的、あるいはマイルストーンだと評価した。ただ、この法はあくまで「理念法」。公共工事の発注者と受注者が“命”を吹き込み、その実効性を担保する必要がある。
 受発注者に求められているのは、改正法成立時点での課題への対応だけではない。社会、経済の激しい環境変化のただ中にあって「品質確保」の意味を矮小化して捉えてはなるまい。ぜひ、改正法の理念を公共工事の「新たな価値の創造」につなげてもらいたい。