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新型コロナと経済の混乱 公共投資で内需を生みたい

2020/4/6 

新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中、政府はあす7日にも、混乱の度を深める事態の収束を図り、その後の経済回復を目指した緊急経済対策を閣議決定する。新型コロナの影響で落ち込んだ景気を下支えするため、すでに予算措置された公共事業費を早期執行する方針も、経済対策には示される見通しだ。
 1月に成立した2019年度補正予算に1兆5699億円、3月に成立した20年度当初予算には6兆8571億円の公共事業費が計上されている。最終年度を迎える『防災・減災、国土強靭(きょうじん)化に向けた3か年緊急対策』の事業費が追加されたことにより、当初予算に計上された予算規模は過去10年では19年度に次ぐ2番目に高い水準だ。
 リーマンショック時の対策を上回る事業規模60兆円が見込まれている緊急経済対策は、新型コロナの治療薬・ワクチンの開発、飲食業・観光業に対する資金繰り支援、雇用調整助成金の助成率引き上げなどが柱になる。 新型コロナの感染拡大の抑制、新型コロナで所得や売り上げの減少という影響を受けている個人や事業者への支援が優先されるため、対策の財源となる2020年度補正予算案には公共事業費は盛り込まれない見通しだ。
 土木工事が大半を占める公共事業への影響は、今のところ限定的だと言われているが、建設産業も新型コロナの影響は受けている。中国からの輸入に頼っている建材や部品・部材などで納品の遅れが見られ、住宅建設やリフォーム工事の引き渡しができないなど、一部に混乱している現場もある。
 これまで経験したことのない事態に直面している国土交通省は、直轄事業での新型コロナの感染拡大を防止するため、受注者が希望すれば一時中止を指示する措置を講じている。
 3月5日時点では全国の工事約200件、業務約1200件が一時中止を申し出たが、同月25日時点で一時中止を継続していた工事は10件、業務64件まで減るなど、現時点で公共事業の執行に支障が出るような事態にまでは陥っていないようだ。
 新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言で外出自粛要請の対象地域となったとしても、その間に国民の生活基盤となるインフラを維持するのは建設業だ。
 現場の人手不足を理由に公共事業の執行を懸念する声は依然としてあるものの、日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)や全国建設業協会(全建、近藤晴貞会長)も「建設業に施工余力はある」と、この国の内需の下支えに貢献する意欲を見せている。
 残念ながら、新型コロナ感染症の拡大による社会・経済の混乱が収束する兆しはまったく見えてこない。社会と経済のいずれもが混迷の度を深める米国や欧州の状況をみれば、わが国だとて例外ではなく、今後も第2、第3の経済対策が必要となるのは火を見るよりも明らかだ。
 公共投資には、事業自体が生産行為であるだけでなく、雇用の受け皿にもなる。新型コロナの経済への影響がさらに拡大しようとしている今、公共投資が持つこうした効果を最大限、生かすべきだ。