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施工者の声 新型コロナ対策/民間工事

2020/4/23 東京版 掲載記事より

新型コロナウイルスの感染拡大防止で大手ゼネコンが工事の「原則一時中断」を決める中、施工現場からは不安の声が上がる。
 あるスーパーゼネコンの技術者は「ウイルスを世の中に広めない義務と、社員を守る義務がある」としつつ、「請負契約がある以上、施主の理解を得なくては工事を止められない」。緊急事態宣言の発出により中断の要請が受け入れられやすくはなったが、顧客のダメージを考えると即断できないと話す。
 現場を閉鎖するとなればまた別の心配がある。「協力会社の職人は収入が途絶える」。さらに、現場は多くの外国人技能実習生に支えられており、「彼らは仕事がなくなっても帰国できない。日本には家族がおらず、外出が制限された毎日をどう過ごすのか」と心を痛める。
 マンション大規模修繕の現場。ここは全て居ながら施工≠ナ、新築現場と異なり、作業員と居住者が接触する機会がある。ある元請け会社は4月上旬、施工中のマンション全ての管理組合宛に休工のお願いを提出し、同意を得られた現場から順次閉所している。全戸に休工の説明と緊急連絡先を示した文書を配布し、不要資材を搬出して足場を点検・施錠。5月6日まで実質2週間の閉所予定だ。しかし、問題はその先にある。休工が長引いた場合、マンション居住者の不便も長引いてしまうからだ。工事再開は、何を基準に判断するべきか。
 一方で中小の工事現場は動いているところが多い。大手のように一日の入場者が数10人〜100人単位というわけではない現場だ。ある内装工事業者は「1現場を2〜3人で担当している。作業中は話をしないし、3密≠ニはほど遠い環境だ」と、通常営業。仮に人数が増えそうな場合は、施主に相談して少人数での工程に組み替える。効率は悪くなるが、ほとんどで「仕方ないね。感染者が出たら、その方が大ごとだ」と理解を得られるという。
 工事現場は、作業を止めても管理費用が継続して発生する。仮設のリース費用。揚水ポンプのメンテナンス。日給月給の職人も休んでいられない。「内部留保でしのげるうちに、事態が終息することを祈るばかりだ」という声は切実だ。