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コロナ禍と公共事業 丁寧に住民理解を得たい

2020/6/29 

「自粛期間なのに、なぜ現場を開けているのか」「工事の音がうるさい」―。政府から緊急事態宣言が出された後、一部の工事現場では近隣住民からこうした声が寄せられたという。
 建設業は営業自粛の対象業種には含まれなかったものの、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、建設作業従事者の命と健康を守るため、あるいは近隣住民の不安や不満の解消を目的として現場の一時休止を決めた元請けも少なからずいる。
 現場でいくら予防対策を徹底していたとしても、感染症という見えない敵と戦う以上、不特定多数の人が出入りする工事現場に住民が不安を持つのも無理はない。これまで以上に音に敏感になってしまうというのも、不安の心理がそうさせるのだろう。工事を継続した現場の多くが、今までよりさらに時間をかけて、丁寧に住民に工事の必要性や進ちょく状況などを説明し、不安や不満を軽減するための努力をしたとも聞く。
 地域住民の理解なしには、円滑な公共事業の進ちょくは望めない。建設業にとって、地域住民の理解・協力を深め、建設業という仕事に興味・関心をもってもらうための取り組みがこれまで以上に重要になっている。住民の矢面に立たざるを得ない受注者だけでなく、工事の発注者にも、コロナ禍での公共事業の円滑な執行の担保を受注者任せにせず、受注者側と協働して当たってほしい。
 聞けば、住民との相互理解を深める場である地元説明会にも、新型コロナウイルス感染症の影響が出始めているようだ。権利関係者への個別訪問ができなかったことに加え、大勢が集まる会場の確保や、三つの密≠回避するための対応が難しくなっているからだ。
 現在の状況が続くようなら、市民の安全を守り、利便性を高めるための公共事業に大きな影響を及ぼしかねない。
 業界全体の広報の手法についても、知恵を絞りたいところだ。業界の魅力を発信しようと、これまでに官民が一丸となって取り組んできた一般市民向けのイベントもその開催が危ぶまれている状況だ。
 自治体や業界団体の広報活動を見ても、例年、6月の水道週間に合わせて行ってきた学校での作文コンクールやイベントができなくなったり、各種フェアや展示会も中止を余儀なくされている。
 現場見学会の受け入れについても、受発注者双方が対応を決めかねていると聞く。地域活性化の貴重なコンテンツとして定着しつつあったインフラツーリズムも、これまでのような形での開催が難しくなっている。
 公共事業の意義を広く一般市民に伝え、その必要性への理解を広げることは、円滑な事業の執行だけでなく、魅力ある業界づくりのために欠かせない。
 難しい状況に直面しているいまだからこそ、公共事業と社会資本整備の意義を、ぜひ、多くの人たちに伝えたい。社会資本整備やその維持・更新の担い手としての責任感と自負を、この国の国民の命と経済活動の基盤を多発、激甚化する災害から守る粉骨砕身の日々を、これまでより多くの国民に知ってもらうための努力を惜しむべきではない。