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求められる効果の見極め

2021/11/8 

テレワークの起源は1970年代までさかのぼるという。その後、情報通信技術の発達や災害時のリスク分散など社会情勢の変化とともに特に欧米で普及・浸透が進んだ。
 日本では、政府による働き方改革が推進され始めた2010年代から徐々に浸透。コロナ禍で導入する企業が急増した。
 新型コロナウイルスは、社会経済に大きな打撃を与える一方、情報通信技術に支えられた新しい生活様式への転換を促し、「テレワーク」という在宅勤務やモバイルワークなど多様な働き方をもたらしたと言える。
 国土交通省が建設業を含む雇用型就業者を対象に実施したアンケート調査によると「勤務先にテレワーク制度が導入されている」と回答した割合は20年度に38・8%となり前年度から倍増した。
 企業にとってテレワークは、育児や介護、病気治療を理由とした労働者の離職リスクを低減できる効果を持つ。生産性の向上、コスト削減、災害時のリスク分散といったメリットもある。
 情報通信サービスを手掛けるBIGLOBEの調査では、全国の20〜30代の学生・社会人に会社選びの条件を聞いたところ、7割が「在宅勤務やリモートワークができることが重要」と答えた。少子高齢化が進む中で、人材確保の観点からも有効だ。
 こうした傾向を踏まえ、テレワークを推奨する形で働き方の方針を練り直した企業も少なくない。
 NTTはこの秋、新しい働き方を目指し、転勤や単身赴任を廃止する方針を打ち出した。コロナ後もテレワークを基本とし、環境を整えた上で社員が働く場所を選択できるようにするという。
 日本経済団体連合会が会員企業を対象に行ったアンケートではテレワークに必要な通信費や機材購入補助について「実施済み」「検討中」「今後検討する可能性がある」と回答した企業が7割を超えた。さらに3割を超える企業が「東京への単身赴任制度の見直し」を検討する可能性があるとも答えている。
 一方で、大手企業と中小企業の「テレワーク格差」を危惧する声もある。民間シンクタンク(パーソル総合研究所)の実態調査によると、従業員1万人以上の企業での正社員のテレワーク実施率(7月)が45・5%だったのに対し、従業員10〜100人未満では15・2%と30ポイント以上の差がついた。
 テレワークには「従業員の勤務状況を確認しにくい」「社員間のコミュニケーションが取りにくい」といったデメリットを上げる人もいる。
 ただ、世界の先進国と比べ、日本の労働生産性は大きく伸び悩んでいる。現在、1人当たりの労働生産性はOECD加盟37カ国中26位と先進国の中でも低い。企業の利益を左右する労働生産性は経営者にとって見過ごせない重要課題だ。
 11月は「テレワーク月間」だという。コロナが早めた生産性向上や働き方改革につながるニューノーマルへの動き。テレワークを導入した会社では通勤時間・経費の削減だけでなく、書類の電子化やWEB会議の活用が進んだはずだ。災害時のリスク分散も含め、こうした効果をポストコロナの経営にどう落とし込んでいくべきなのか。いま一度考えたい。