建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

■建設業の戦略営業 ―基本編― =第6回 〜戦略営業・レベル3「顧客コミュニケーションを向上させる活動」(1)〜

いいね ツイート
0

前回の戦略営業のレベル2から引き続いて、今回はレベル3「顧客コミュニケーションを向上させる活動」を説明する。
営業である以上、顧客と言葉を交わし、人間関係を作り、そして深い商談のできる状態に持っていくのはごく当たり前の姿である。実際、大なり小なりそのような関係作りは営業担当者であれば誰もが行っているはずである。
「しかし、待てよ」と筆者は思う。各営業担当者がそのような親密な関係を築いた相手というのが、ごく限られた既存取引顧客に限定されていないだろうか。
特に官庁工事を主に担当してきた営業担当者の場合は、自ら担当している発注者と同業者には顔なじみとなりコミュニケーションを取る事ができても、これが民間企業の新規開拓顧客となると勝手が違う。
この連載ですでに何度も述べてきているとおり、顧客からの引き合いに頼った営業スタイルでは人間関係を作れる顧客に限りがある。また、既存取引先が先輩社員の時代から、会社の看板を通して付き合いのある顧客であれば、個人の努力で人間関係を築けた顧客がどれだけいるのだろうか。潜在顧客を開拓し、人間関係を築くのはあなた個人の力にかかっているのだ。
顧客(特に開拓すべき潜在顧客)とのコミュニケーション能力を高め、人間関係を作り、深い商談ができるようになるためには、次の3点のコミュニケーション能力を高めなければならない。

(1)基本動作の練磨
筆者が全国で建設営業担当者を対象にした研修を行う際に必ず実施するのがお辞儀に代表される基本動作である。建設業協会主催の講習会ともなると若い営業担当者に交じって営業部長クラスの人も参加される。
彼らに「私をお客様と思ってお辞儀をしてください」と言って皆にお辞儀をしてもらうと及第点のお辞儀ができる人は半分もいない。
まず、首だけで曲げるお辞儀(営業は腰から45°に曲げる)や腕がぶらっとしたお辞儀(営業は脇を締め、手の指をそろえて太ももにまっすぐに付ける)になってしまう。
たかがお辞儀と言う無かれ、営業担当者は第一印象がすべてである。身だしなみも含めて「この人は好ましくない」と思われたらアウトである。
営業担当者は少なくとも“嫌われる営業担当者”になってはいけない。言葉遣い(敬語の使い方、特に謙譲語の言い回しが上手くない人が年配の人でも意外といる)や電話応対(相手に対する印象や都合を考えた会話を心がけていない)、名刺交換(名刺の持ち方や渡し方を正しく理解していない人がいる)なども含めて基本的なマナーを身に着けていないのは非常に見苦しいものである。
基本動作をいい加減にせず、キチンとこなす“好かれる営業担当者”になってほしい。

(2)人間性の練磨
 人間性と言っても大袈裟なことではない。例えば、「顧客と午前10時に会う約束をしたら、必ず10時に訪問する」。それだけのことである。
 「なんだ、その程度・・・」と思わないでほしい。あなたは顧客との約束に毎回遅れずに訪問しているだろうか。仮に3分でも遅れれば遅刻である。これが5分や10分くらいの遅刻でも営業担当者からすれば「たかが5分、10分」と思うことが相手にとってはそうでない事のほうが大きいのである。
営業担当者は自分を中心に考えてはいけない。すべての軸は顧客を中心に考えるべきである。顧客との約束(訪問時間、見積書・提案書などの提出、顧客からの要望に対する返答等)はどんな事があっても守らなくてはならない。一つひとつの約束を守ることが顧客との信頼につながるのだ。

(3)商品知識・情報提供のレベル・アップ
顧客と深い人間関係を作るのに最も重要であると思われるのはこの部分である。この点の解説については次回に譲りたい。


■問い合わせ先
東京都新宿区下落合三丁目16番14号 第2ニッコンビル
(株)日本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所
TEL 03(3950)1178 FAX 03(3952)0430
http://www.niccon.co.jp/kensetsu/
ご質問にはお答えできない場合もございますのでご了承ください。
メールでのお問い合わせは kensetsu@niccon.co.jp

執筆者プロフィール

鞄本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所 副部長コンサルタント 酒井 誠一