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建設経済の最新分析Fコロナ関連融資 建設業の返済動向に注視

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 「貸出先別貸出金」(日本銀行)によると、金融機関の建設業に対する貸出金残高は2020年3月までは約16兆円で推移していた。コロナ禍に入って、20年9月にはコロナ関連融資の利用増加により2兆円以上増加して約19兆円となった。21年3月以降も、金融機関の建設業に対する貸出金残高は約20兆円台で推移し、依然として高い水準が続いている。当研究所では、建設企業に対してコロナ関連融資利用状況などのアンケートを行い、その返済動向などについて調査した。
 アンケート対象企業は、全国の経営事項審査受審企業から無作為抽出した約4000社。そのうち、690社から回答を得た。回答企業の資本金については、資本金「2000万〜5000万円未満」の企業が46・4%で最も多く、次いで「1000万円未満」の零細企業が25・1%、「1000万〜2000万円未満」の企業が14・2%と、資本金5000万円未満の企業が8割以上を占めている。
 アンケート回答企業のコロナ関連融資の利用状況を見ると、42・5%(293社)の企業が「借りた」と回答している。資本金別内訳では、資本金「5000万円未満」の企業が92・9%を占めており、「1000万円未満」の企業が27%、「個人」が3・8%であった。コロナ関連融資を「借りた」と回答した企業のうち、14・3%の企業が返済が「厳しい」(「返済が遅れる恐れがある」または「リスケジュールなどの条件緩和がないと返済は難しい」)と回答している。
 返済が「厳しい」と回答した企業を資本金別に見ると、「1000万円未満」の企業が40・5%、「個人」が7・1%となっており、コロナ関連融資を「借りた」企業全体と比べ、「1000万円未満」の零細企業の割合が大きい。コロナ関連融資の返済が「厳しい」企業の20〜22年度の売り上げを見ると、「減少した・する」と回答した企業が約7割を占めている。
 これらの調査結果から、資本金「1000万円未満」の零細企業であって20〜22年度の売り上げが減少している企業は、特に返済状況に注視する必要があると考えられる。また、コロナ関連融資を「借りた」企業の半数以上が20年度中に借り入れを開始しているので、23年度から順次返済猶予期間が終了して返済が本格化することから、今後の資金繰りの悪化が憂慮される。
(建設経済研究所 研究員 荒川素輝)