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建設経済の最新分析G従業員エンゲージメント 中小建設業の人材確保の鍵に

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 コロナ禍を経て、「働く人」の価値を最大限に引き出すことで企業価値を中長期的な発展につなげる、いわゆる「人的資本経営」が注目されている。企業が目指す方向性を従業員が理解・共感し、その達成に向けて自発的に貢献しようという意識である「従業員エンゲージメント」の高まりにより、企業の生産性向上が期待できることに加え、企業イメージの向上により採用強化や離職防止につながるなど、企業側にもさまざまなメリットがある。
 建設業においても人手不足が深刻化する中、働き方改革、デジタル化の進展や働く場所の多様化などにより従業員の働き方や価値観に大きな変化が生じている。
 そこで、中堅中小建設会社・専門工事業者の従業員エンゲージメント向上の取り組み状況の把握を目的として、全国建設業協会傘下企業を対象にアンケート調査を実施した。
 従業員エンゲージメント向上の取り組み状況は、土木・建築別や官公庁工事比率の大小による差異はみられなかったが、企業規模が大きく、従業員の平均年齢が若いほど取り組んでいる企業の割合が高い傾向がみられた。また、大多数の企業が採用強化や離職防止などの人材確保のための方策として取り組んでいることが分かった。従業員に対し積極的に企業理念やビジョンの浸透を図っている企業も多い。取り組みを推進する上で社内の推進体制の整備や従業員の意識醸成などが重要であり、経営戦略との結びつきを明確化することの重要性も認識されていた=図参照。
 多くの企業が従業員エンゲージメント向上のための取り組みの必要性を感じていながらも実施には至っておらず、既に実施している企業においても、時間や労力の不足とともに情報・知識の不足が課題となっている。従業員エンゲージメント向上のための取り組みの効果は一朝一夕に発現するものではなく、効果が実感されるまで取り組みを継続していくためには、管理職の理解や従業員の協力・賛同を得ることが肝要である。(建設経済研究所 研究員 川井真理)