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■建設業の戦略営業 ―基本編―  =第7回=〜戦略営業・レベル3「顧客コミュニケーションを向上させる活動」(2)〜

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前回の戦略営業のレベル3「顧客コミュニケーションを向上させる活動」の続きを説明する。
(3)商品知識・情報提供のレベル・アップ
営業である以上、顧客とコミュニケーションを取るために最低限必要な商品知識というものがあると思う。この場合の商品知識とは例えば建築、土木といった施工物件を売るための主として技術を中心とした知識が基本にある。
建設業の場合、企業にもよるが施工部門の経験を有する技術系社員(工事担当などの経歴を持つ者)が営業に配属されるケースが多い。これらの社員は事務系の社員と比較すると技術に関する商品知識を備えていると言ってよい。
こと技術に関する商品知識となると技術系の社員の方が有利である。しかしながら、商品知識としてそれだけで営業現場で足りるかと言えば、そういうことではない。
筆者の指導経験では、工事の規模にもよるが積算・見積りは大概の企業では営業部門でなく技術部門で行っている。もし、顧客先で出来上がった図面を受け取って技術部門に持っていくだけの仕事であれば事務系の社員でもできる。
技術系社員の商品知識として求められるのは、例えば価格の面で折り合いがつかない場合に、既製の図面をふまえてVEなどによるコスト削減を提案したり、スーパーや工場のように1日も早く物件を完成させたい顧客に対して、より短工期となる施工方法を提案すること。さらに、図面もまだ無いアバウトな状態での顧客からの引き合いに対しては、要望を顧客から聞き取り、仕様をかためて概算の金額(「この程度の予算が必要ですよ」のレベル)を提示するなど、技術系ならではの技術を裏付けとした提案型営業が望まれる。
さて、それでは事務系社員が商品知識については厳しいのかと言えばそればかりでもない。確かに技術という面では技術系社員と比較するとハンデがある。しかしながら、技術的なハンデを補う要素がいくつかある。
事務系社員が営業として専門性を発揮するには、一言で言えば「顧客に役立つ商品知識や情報提供ができること」である。
あなたは例えば流通業に訪問する際にどのようなネタ話があるだろうか。店舗として出店可能な土地情報を持っていくのはよくある情報と思われる。ではお店の情報はいかがだろうか。
食品スーパーであればお店の中の情報、例えば10時開店時に商品棚にどの程度の生鮮品が並んでいたかとか、夕方の時刻であれば肉や魚のパックにドリップ(血合いの液)が出ていなかったか、一般食料品であれば欠品になっている商品が無かったかなど少しお店を見てまわるだけでもいろいろな情報が得られるし、他店と比較すれば長所・短所も見えてくる。
他にも出店に際しての様々な法規制の知識や店舗出店の収支計算業務のサポートなど事務系ならではの専門性はいくらでもある。
要はいかに顧客の事を常に考え、顧客から「○○建設さんが来ると、いつも有益な情報を提供してくれる」という期待感を持って営業担当者を迎えてもらえる関係が作れるかと言う事が重要なのである。
このような関係が継続的な訪問を可能とし(常にアポイントメントが取れる)、顧客との人間関係が構築され、ビジネスチャンスにつながる深い商談へと発展していく。
以上のように顧客コミュニケーションの向上は基本動作と人間性の練磨というベースをふまえて、営業担当者のたゆまぬ努力(商品知識、情報提供)により構築されていく。
次回は、訪問活動をとおして顧客ニーズを把握し、自社の優位性を促進する活動について解説を行う。


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執筆者プロフィール

鞄本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所 副部長コンサルタント 酒井 誠一