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足りないものは充電インフラ、日本のEV充電インフラの現状と課題 【第2回】賃貸住宅供給大手の大東建託に聞く、EV充電設備の導入提案を本格開始した背景とその後

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 2023年1月からEV充電設備導入基準を新たに策定し、EV充電設備を備えた賃貸住宅の提案を行っている大東建託に話を聞いた。

―なぜ23年のこのタイミングから賃貸住宅へのEV充電設備の導入に本腰を入れたのでしょう
か。
 これまでもオーナーからのEV充電設備導入の要望があり、それに対し個別対応をしていました。昨今の脱炭素社会実現に向けたEV需要の高まりにより、その要望が徐々に増えてきたことと、当社の賃貸住宅供給力を考えた時、EV充電環境の整備に取り組むことで、賃貸住宅に入居の方々にもEV充電インフラが整い、車の購入時にEVという選択肢が増え、EVの普及促進に貢献することができると考えました。

―導入基準を策定した後、オーナーや入居者からの反応や反響はいかがですか。
 現時点で一定の地域に特定されている傾向はありませんが、カップル・ファミリー向け賃貸住宅の販売棟数が多いため、設置割合も高いです。EV充電器設置義務化条例の影響を受けてなのか、東京都の反響は大きいように感じます。

―大東建託とテラモーターズは23年11月から協業を開始しました。外部の充電サービス事業者と組むことについて、どのようなメリットがありますか。
 三つあります。一つ目は、当社は今年1月より、住戸数と同等もしくはそれ以上の台数の駐車場を設置している賃貸住宅向けにEV充電設備の導入基準を策定し、全国で提案を開始していましたが、駐車場の設置台数が住戸数より少ない賃貸住宅にも導入の提案ができるようになりました。
 二つ目は、賃貸住宅の設計段階から密接に連携できることで、EV充電設備の導入を希望するオーナーには、スムーズで負担のない賃貸経営ができます。国の充電インフラ補助金交付率の高いテラモーターズに任せることで、オーナーはコストを抑えることができます。
 三つ目は、専用のアプリによって入居者に利便性の良いサービスを展開していることです。これらのメリットから、当社は賃貸住宅の資産価値向上と賃貸住宅入居者層のEV普及促進を図り、脱炭素社会の実現に向けて取り組みを加速させていきます。

(あとがき)
自宅にEV充電設備があることは、EVユーザーの利便性・安心感につながる。大東建託に続き、他の企業にも、特にメリットが得やすい新設住宅へのEV充電設備の設置を推進してもらいたい。

執筆者プロフィール

Terra Motors且謦役会長 徳重 徹(とくしげ・とおる)

徳重 徹(とくしげ・とおる)
Terra Motors且謦役会長
1970年生まれ山口県出身、九州大学工学部卒。住友海上火災保険株式会社(当時)にて商品企画・経営企画に従事。退社後、米Thunderbird経営大学院にてMBAを取得し、シリコンバレーにてコア技術ベンチャーの投資・ハンズオン支援を行う。2010年にEV事業を展開するテラモーターズを創業、インドの電動三輪市場においてトップシェアを獲得。22年に日本でEV充電インフラTerraCharge事業を立ち上げ。EVをもっと身近にすることを目指して、新たなインフラづくりに取り組み、世界で勝てる事業の創出へ挑んでいる。