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足りないものは充電インフラ、日本のEV充電インフラの現状と課題 【第3回】分譲マンションでEV充電器を設置する時の三つの視点

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 第1回、第2回の連載では、集合住宅を取り巻くEV充電に関する動向や、賃貸供給実績大手の大東建託がEV充電設備設置に本腰を入れたことについて深掘りした。
 脱炭素化や今後のEV普及を見据えて、いざ分譲マンションにEV充電器を設置しようとしたとき、「住民間での合意形成」「設置費用の負担」「充電器の設置場所」の三つを考える必要がある。
 分譲マンションは、区分所有者の管理組合によって日々維持・管理され、意思決定は総会で行われる。
 1、2点目の合意形成と費用負担について、EVを持つ人も持たない人も居住するため、設置費用を誰が負担するのかが論点となるが、その合意形成が難航するケースは非常に多い。設置費用については、居住者全員が負担するのか、充電器を利用する受益者のみで負担するのか、大きく二つの方針がある。後者の場合は、居住者全員の合意は得られやすいものの、利用者の負担が大きくなり、新たに利用者が出てきた場合の負担が課題となる。
 最近では、弊社以外にもEV充電サービスを提供する多くの企業が、設置やメンテナンスにかかる費用を無償としたプランを設けている。事業者に任せて、スムーズに住民の合意形成を図り、費用負担を軽くすることが期待できる。
 また、3点目の設置場所に関する考え方は、大きく分けて「個別設置型」と「シェア型」の2種類がある。個別設置型は個別の駐車スペースにそれぞれ専用の充電器を設置する方法、シェア型は充電専用の共用スペースに充電器を設置し、充電したい時にEVを移動させて充電してもらう方法である。
 弊社としては、基本的に集合住宅においては個別設置型を推奨している。EVを保有する住民が増えた際に充電待ちが出てきてしまうことや、本来であれば駐車料金で収益を上げられるスペースをつぶしてしまうというデメリットがあるためだ。
 充電器の設置場所に加え、電気室から充電器までの距離や配線を埋設するかどうかなどの要素を踏まえ、駐車場によって最適な充電スペースの在り方が変わってくるのだ。

※写真は、個別設置型で各車室にEV充電器を設置した駐車場のイメージ

執筆者プロフィール

Terra Motors且謦役会長 徳重 徹(とくしげ・とおる)

徳重 徹(とくしげ・とおる)
Terra Motors且謦役会長
1970年生まれ山口県出身、九州大学工学部卒。住友海上火災保険(当時)にて商品企画・経営企画に従事。退社後、米Thunderbird経営大学院にてMBAを取得し、シリコンバレーにてコア技術ベンチャーの投資・ハンズオン支援を行う。2010年にEV事業を展開するテラモーターズを創業、インドの電動三輪市場においてトップシェアを獲得。22年に日本でEV充電インフラTerra Charge事業を立ち上げ。EVをもっと身近にすることを目指して、新たなインフラづくりに取り組み、世界で勝てる事業の創出へ挑んでいる。